女の涙は苦手
「……あーもう、泣くんはやめるさぁ……」

ボロボロと大粒の涙を零した夢野とかいういなぐに頭をかいた。
いなぐに泣かれるんは苦手だばぁ、どうしたらいいかわからない。

「わんは別にやーを泣かせるつもりはないさぁ」

「すみません、わ、私も泣きたいわけではなかったのですが……ふぉう、止まれぇ」

勢いよく空を見上げた夢野は、仰け反りすぎてそのまま後ろに転んだ。

「夢野さん!」
「詩織ちゃん、大丈夫だC〜?!」

鳳と芥川が心配そうに声を上げるが、他のヤツらは片手で目元を覆っていたり、眉間に皺を寄せて固まっていたり、必死で笑いを堪えているかのどれかである。

「……ぶはっ、ちょ、わらわさんけー……くくくっ」
「凛、やめるさー。ぶっ、わんも我慢できなくなるだばぁ、っ、あははっなんさ、どれだけ仰け反る気さぁ……!」

凛につられて吹き出してしまったら、後ろにいた不知火や新垣も吹き出して、慧くんも大声で笑っていた。

「……はぁ、まったくおかしな人ですね。調子が狂うじゃないですか。甲斐クンも平古場クンも柳生クンを見習いなさい」

永四郎の声に顔をあげたら、間抜けな顔をしている夢野を駆け寄ってきた柳生が起こしている。永四郎はふんっと鼻を鳴らしてから「汚れたり濡れたりはしてないと思いますよ」と胸ポケットに入れていたらしいハンカチを夢野に差し出した。

「や、柳生さんも木手さんもありがとうございます。そして皆さんすみません、平にすみません……」

「い、いえ。大丈夫ですから」

全員にペコペコと頭を下げる夢野は顔が真っ赤だ。

「なんくるないさぁ。転んだ拍子に色気のないパンツが見えただけさー」

「な、け、けしからん!」

凛が平然と言うと、夢野自体は口を開けて固まっていたが、変わりに真田がひどく動揺して声を上げていた。……いや、他にもわったーを睨んでいる奴らがいる。

「……とりあえず、彼女にまた泣かれては無駄な時間をくうだけのようですから、山小屋には大人しく付き合ってあげますよ」

永四郎の言葉に寛がゆっくり頷く。わんも永四郎が決めたことには逆らわないさぁ。

「んだばぁ、いくさー」

「え!ちょ、あの、くび、首締まるっ死ぬ!」

夢野の首に腕を巻きつけて、笑いながら山小屋まで走ってやった。
身長差により、わんが屈まなければいけなかったが、そのしんどさよりも愉快な気持ちの方が強い。



「裕次郎の奴、ちゃーなとーが?」
「……まぁ、甲斐クンは後ろの反応を楽しんでいるんでしょう。……でーじなちゅらかーぎーあらん……まったく不思議ですね」

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