何このブッサイクな人形
「おん。これ詩織からっすわ」

「…………は?」

関西大会が終わった次の日、財前から妙な人形を手渡された。

どうやらうちの部の人数分届いたらしく、財前はめんどくさいと思いつつもあのアホの頼みなので、嫌々配っているらしい。

真顔で聞き返した俺に「……せやから、なんやお守りみたいなもんらしいっすわ。ポクポン人形やったっけ……」とあくびしながら答える。

「これ、特に恋愛に御利益あるタイプのやつやでぇ☆」

「小春ぅ、ほんまか!」

どうやら俺と揃いらしい小春が可憐にウィンクしてくれよった。
あまりの可愛さに抱きつく。

「ユウくん、暑苦しいんやけど。……そやなぁ、光くんたちのもそれぞれ違うようやけど……わざわざ選んでくれたんやねぇ。詩織ちゃん、いい子やわぁ」

「ふぅん。……聞く限り、あのアホ知り合ったテニス部全員に渡して回ったらしいっすわ」

「……そうなんか。えらい数になったやろうに……」

財前の後ろにいたケン坊が感心したように息をついた。
その横で騒いでいる金ちゃんや謙也たちに一度視線を向ける。
……白石を見るんやなかった。なんで匂い嗅いどんねん。本格的に目覚めよったな、アイツ。

「……吹っ切れたんかねーやおいかんなこと」

師範の隣でスポーツドリンクを飲んでいた千歳が、意味深にぽつりと呟いた。

……なんのことやねん。とツッコミつつ、もう一度手の中にある人形を見る。


「…………なんや、夢野に似とるからか、異様にムカつくわ」

別にあのアホのことを気にしとるわけやない。

ただ、ブッサイクなとこが似とる……と。

そう思っただけやねん。

……まぁ悪いことの身代わりなるようやし、携帯電話のストラップぐらいにしといてやってもえぇか。
しゃーなしやからな。

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