脚フェチの人が本気です
──誰か今のこの状況を説明して欲しい。


「ふん、ウチの手塚も不二も、期待のルーキー越前もなかなかやるだろう?」
「いやいや、千石くんや目立ちはしませんが、南くん、東方くんも頑張っていますよ」
「……クソ爺」
「聞こえましたよ、クソ婆」

頼むから私を挟んで口喧嘩しないでもらえないだろうか。
というか、何故私は竜崎先生と伴田先生に挟まれて、数個のモニターと睨み合いしているんだ。
否、このモニターに映し出されているのは、今現在裏山にて謎の障害物競争を繰り広げているテニス部の人たちの様子であるのはわかっているのだけど。

「見てみぃ、金ちゃんすごいけど、ルールわかっとらんねんで」

「……あぁ、それで何度も逆走しては皆さんに連れ戻されているんですね」

背後から私の両肩に手をおいて説明してきたオサムちゃん先生に苦笑する。セクハラはやめてくださいと訴えた方がいいだろうか。

「……それにしても──」
「ふむ。首位争いがうちの忍足とそちらの忍足のようだな。意外だが」
「──従兄弟対決やなんて、オモロいなぁ」

「くっ、若くんも跡部様も一体何をしているんだ!後、真田さんも先頭集団にいないなんてけしからん!」

オサムちゃん先生と榊おじさんのセリフに、私は大袈裟に嘆いてモニターが乗っている長机を思いっきり叩いた。
くそう、手がじんじんする。忍足先輩め。
このままでは、私の身が危ういじゃないか。

「……この二人が勝ったらあかんの?」

「いえ、四天宝寺の忍足さんは特に気にしてないんですが……よく知らないし。……取り敢えず問題はうちの忍足先輩です」

くそう、丸眼鏡のレンズを黒いマジックペンで塗り潰してサングラスにしてやれば良かった。否、そういえば篠山さんから、忍足先輩の眼鏡は伊達眼鏡説を聞いたことがあるし、もしかしたらそうしてもノーダメージだったかもしれない。
かくなる上は、忍足さんにがんばってもらうしか……!イメージ的に私への頼み事も食べ物関連で済みそうだし……!


「お。遂にあのエリアやで」

不意に忍足先輩たちが映し出されているモニターに信じられないものが映った。

巨大即席プールに水着の美女が五十人ぐらいいる。

「…………なんですか、これ」

「あぁ、用意したモデルだ」

「現役モデルやなんて、俺もあそこ行きた――っい、痛ぁ?!なんで今蹴ったん?!」

榊おじさんが至って真面目に答えてくれた後に、オサムちゃん先生のにやけ顔が画面に反射で映ったのがあまりにも癪に触ったので思いっきり踝を蹴ってやった。
だって鼻の下を伸ばしすぎである。静かにしていたら、そこそこ格好いい大人の男性に見えるのに、本当に残念だ。


「…………それでこれはどういう障害ですか」

「せやから年上のお姉さんに誘惑されても、ちゃんと無視できるかという──」
「最低だよ!この障害っ」

テニス部少年たちが可哀想すぎる。
ほらみろ、忍足さんが真っ赤な顔で狼狽えて、自慢のスピードが完全に止まってしまったじゃないか。こんなの思春期の青少年には刺激が強すぎるんじゃ……

「……嘘」

開いた口が塞がらない。どうしよう。心でも閉ざしたのかというぐらい、無表情で水着美女を切り抜けて、忍足先輩が単独首位に立ってしまった。
ちなみに千石さんは案の定水着美女に声をかけている。



……このままではやばい。

だけど、あんな水着美女に目もくれず冷静に対応した忍足先輩が何故かすごい男前に見えて迂闊にもときめいた。





『けしからん!キェェー!このたわけがぁっ!』

そして水着美女で足止めされていた純情なテニス少年たちが意識を取り戻したのは、真田さんの気合いの入った一喝だった。

ちなみに真田さんより前にいた人でこの難所を切り抜けたのは、忍足先輩の他に跡部様と手塚さん、不二さん、毒手の白石さん、リョーマくん、一氏さん、小春お姉様、石田さんだけである。


「やれやれ、やっと折り返し地点だねぇ」

そういった竜崎先生は意地悪そうに笑っていた。

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