教師が最低です
──昼食を取った後、榊おじさんとの個人レッスンはとても充実した内容となった。やはり榊おじさんはすごい。
昼食後のジロー先輩と丸井さんのダブル攻撃を忘れるぐらいである。いやぁあれは本当に参った。ジロー先輩が私のヴァイオリンを気に入ってくれているのは知っているが、丸井さんはどうしてあそこまで私を立海席に座らせたいのだろう。嫌がらせかとも思ったが、わざわざ嫌いな人間を眺めながらご飯を食べたい人はいないはず。つまりは私の昼食デザートを狙っているに違いない。そうだ、きっとそうに違いない。よし、これで謎は解けた。



「失礼するでー」

二時間ぐらい榊おじさんと練習していたが、防音室の中に入ってきた人物によってそれは終わりを迎えた。
ふざけているとしか思えない教師のオサムちゃん先生である。

どうも榊おじさんは、このタイミングでの彼の乱入を予め知っていたようだ。ピアノの前から移動して楽譜を整え始めたので、きっと練習は終了ということなのだろう。

「おじさん、ありがとうございました。では失礼します」

「え!なんでやねん!夢野ちゃん、冷たいなぁ」

「え!私に用事ですか?!」

いきなり肩をつかまれたので吃驚した。
普通に榊おじさんを呼びに来たと思ったのに、何故私に用事なんだ。

「実はなぁ、顧問全員一致で自分に一肌脱いでもらおうと思ってなぁ。オモロいことになり……げふんげふん、なんでもないで。取り敢えず手伝ってくれたら、1こけしやろう」

「嫌な予感がする。そしてこけしとはなんぞ……というわけで、やはり失礼します」

「ははっ、あんたのことは逃がさないよ!」

オサムちゃん先生から逃げたと思ったのも束の間、私は廊下であの青学の、確か竜崎?先生に捕まったのである。
なんということだろうか。

そして私はこの後さらに驚愕することになる。
何故かと言われたら、この教師陣が私をテニス部らの人たちの練習の賞品的なものにしようと決めていたからだ。
え、この人たち何いってるの?罰ゲームは乾先輩の作成したドリンクなのはわかったとも。だが、何故私が賞品になる?!

「いやぁ、あんた、妙にヤツらに懐かれてるみたいだからねぇ。昼食の時も座る席がどうのって騒いでいたじゃないか」

「は、はは。騒いでいる人は一部の方ですよ?」

何より賞品ってなんだ。私なんかが賞品って、どうなの。どう考えても跡部様や若くんに鼻で笑われて、やる気を削ぐだけの存在になるに決まっている。
むしろ一氏さんとかに殺される。おこがましすぎます。
っていうか、あんなキラキラした人たちに超失礼ですぜ、先生方!

考え直して下さいー!と叫んだが何故か総スルーされた挙げ句にオサムちゃん先生に「これ着てテニスコートに来てや」と何やら不穏な香りのする衣装を手渡された。
それから髪型は横ポニーが可愛えぇと思うで?といらんことまで付け足される。
なんだこの人、見かけ以外にも不安要素がある教師じゃないか。大丈夫ですか。

「では詩織、待っている」

そう颯爽と去っていった榊おじさんとテニス部顧問陣に思わず溜め息を吐き出してしまった。





「…………チアガール姿を晒して、私に死ねと申されるのか」

ご丁寧にポンポンまでオプション付きでした……。
桃ちゃんと丸井さんが爆笑している姿と、「たわけーっ!けしからん!」と叫ぶ真田さんの姿が脳裏を過ぎったのだった。

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