*あなたとうたた寝

「…………、……何故貴様も寝るんだ、この状況で」

ついた溜め息は深かったが、どこか重くはなかった。

寧ろ軽い。

……夢から覚めても、夢子の顔がすぐそばにあることに思わず唇は弧を描いた。





――疲れていたのかもしれない。

この世界に慣れるために、色んな情報を吸収することも

そして、実践することも

不慣れなことをし続ける日々は、やはりどこか体に無理をさせるのだろう。


「……チッ」

ゆらりと視界が揺れ、目の前の景色が回る症状に舌打ちをした。

最近、一人で外出することもできる。
といっても、精々夢子の家の周りくらいだが。

そして、夢子の家のすぐ近くにある神社の大木を見上げたら、先程の目眩に襲われたのだ。

御神木らしいその木の根元でうずくまる。

暫くじっとしていれば、じきにおさまるだろう。


『……っ、三成さんっ!』

その時夢子の声が聞こえて、気づいた頃にはすぐそばに彼女がいた。

水です、とどこかで買ってきたのか、あの透明な入れ物ごと手渡される。

断る理由もなかったので、私はそれを口にした。
冷たくて気持ちいい。

『……大丈夫ですか?』

呼吸も脈も、徐々に落ち着いてきていた。

だが、その心配げに私を見つめる夢子の視線に心が渇きを訴えてくる。

夢子の優しさと関心が今は私だけに向けられているのだと思うと、どこか優越感のようなものが生まれた。

そしてもう少しこのままでいたいと、このゆったりとした時を味わいたいと願う。


「…………貴様の膝を貸せ」

『……え?』

「膝を貸せと言ったんだ。何度も言わせるなっ!」

きっと私の顔は真っ赤だろう。

夢子は合点がいくと、ゆるりと微笑んでくれた。

それだけでまた熱が上がる。


……そして私は夢子の太ももに頭を乗せた後すぐに意識を沈ませたのだった。
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