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「ま、またぁ?」

僕は何故か高校に入学した次の日からストーカー被害に遭ってます。
出来たばっかりの友達に言ったら自意識過剰って笑われたけどね。
でもほんとに遭ってんの!
勘違いとかじゃないからっ。

まずは視線。
帰り道とかずーっとねっとりとしつこい視線を感じてる。でも振り向いても誰も居ない。
怖くない?え、怖くないって?僕は怖いよ!
学校内は友達と居るからか流石に気にならないけど登下校がかなり憂鬱。
友達は皆電車通学で僕だけ歩きだから帰りは1人ぼっちでいつもビクビクしてる。
僕の方がかなり不審者だと思う。
でも視線だけならいつか慣れるかもしれないけど残念ながらそれだけじゃないんだよ。

何故か僕の私物がよく消える。
シャーペンとか消しゴムとかたまに飲みかけのジュースとか、1番酷かったのは体操服だね。
しかも消えても何故か毎回新品の同じものが机の上に置いてあんの。
もうそれ自分で使ったり飲んだりしなよ。
体操服もわざわざ僕の名前を胸元に刺繍して置いてたよ。
確かに体操服には胸元に名前の刺繍があるけど!
用意周到なのが余計怖いからほんと!

まぁとにかく、こんな事が毎日あんの。
ビビリな僕は視線とか物が無くなったりとかしただけで挙動不審になる。
つまり毎日挙動不審。
いつかビビリ過ぎて心臓止まりそう。

何で僕なんだろ。
自分で言うのも悲しいけど面白味なんてないのに。
顔は普通、背だって男にしては低いし特別何か得意なものがあるという訳でもない。
見た目どころか中身まで普通なのに。
この学校で1番人気の天野 宇宙(あまの そら)先輩なら納得できるのに。
天野先輩は外国の血が混じってるらしくて目鼻立ちもはっきりして綺麗な顔だし身長も高くてお父さんが大企業の社長とかで金持ちらしい。
確か運動神経も良いって聞いたなぁ。
入学式の時チラッて見たけどオーラからして違う。
カリスマって感じ。
どうせならあんな人のストーカーしたら良いのに。
先輩なら日々色んな事してそうだから見てて楽しいと思うよ。






「今日は靴が変わってたなぁ…」

足のサイズまでバッチリ分かってたんだ。
しかもメーカーまで一緒だよ。
もう凄いね。ほんとに。
ビックリしたよりもそこまで知られてるのが怖くて腰抜かしちゃったよ。
お陰で帰るのが遅くなっちゃった。
このストーカーってどんな子なんだろ。
可愛い子…では無さそう。
可愛い子がこんな普通な奴に惹かれるわけないし。
意外と年上のお姉さんとか?
ちゃんと買って返してくれるからそれなりの経済力はある筈だし…
普通に話し掛けてくれたら良かったのに。
そしたら段々仲良くなって初々しいカップルになれたかもだし。
初めて彼女が出来たかもなぁ。
ああ、でも今話し掛けられても仲良く出来ない。
怖すぎる。うん。
自分をストーカーしてる人と付き合える程神経図太くないからね。
今もねっとり視線感じるし…家までもうすぐだしは、走っちゃおっかな。
足遅いけど歩くよりは早いし。


「いっせーのっ…ふぐっ!?」

どうせ家までついてくると思うけど限界。
この視線から解放されたいの!
逃げる為に走り出そうとした瞬間、背後から抱き着かれた。
腕の位置からして僕より背が高い。
ま、まさか、ストーカーって、お、男?
口許にタオルを当てられて少しずつ意識が遠退いてく。
遠くで『斗真(とうま)』と僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。









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