雅兎視点 | ナノ
 



『でもまさかあの宮野がオトせるとはなー』

『皆無理に賭けてたしな。人は見かけによらねぇって事だな』

『絶対無理だと思ったのによー。俺今月厳しくなったわ』


教室から出て部屋に帰ろうとしたらそんな会話が聞こえた。
宮野と言ったから顔を確認したら案の定あいつのクラスメイト共だった。
何の会話かなんて、直ぐに分かった。
あいつも、他の奴みたいに俺と付き合えるかを賭けてたのか。
過去に何回もあった事だ。
あった事なのに、苛立ちが止まらねぇ。
あいつだけは違うと思ってた自分が馬鹿らしく感じて自然と笑みが零れた。



あいつが部屋に帰ってくるなり無理矢理犯した。
あいつから紡がれた言葉は全部嘘だったのか。
そう思うとあいつから何も聞きたくない。
聞きたくないから口をネクタイで塞いだ。
あと顔が見えなくて済むように後ろから。
体は自然と熱くなるのに胸の奥が冷たい。
今ならまだ知らない振りをしてられる。
気付かない振りが出来る。
耳に届くくぐもる声も引き攣る体も見て見ぬ振りをして犯した。

本当は知ってた。
傷付いてる自分に気付いていた。
俺がここまで惹かれたのは悔しいけどこいつが初めてだ。
こんなにも傍に居るのが心地好くて一生傍に置きたいと思ったのは初めてだ。
それなのに、こいつは今までの奴等と同じように俺で賭けてた。
言い様が無い苛立ちと言い表せない虚しさ。
冷静さを失い、何もかもを忘れるために滅茶苦茶に犯した。



「おれが、おとせるか、かけたの…おまえじゃ、なくて…げ、むの、もんすた…」

その言葉は、また嘘かもしれない。
でも本当なら?
それなら、俺がした事は…
無くした冷静さを一気に取り戻した。
何で俺はこいつを疑ったんだ?
こいつは俺に嘘がつける程器用じゃねぇ。
馬鹿みたいに単純で素直。
こいつのそんな所に俺は惹かれたんだろ。
それなのに、俺は信じてやれなかった。









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