4 | ナノ
 



そんな事を呟いても後の祭りだ。
雅兎は一度興味を無くすともう興味を持たない。
ずっと見てきてずっと同じ空間で生活してたんだ。
雅兎の事は知ってるつもりだ。
弁解した所でこいつなら「そうか」で終わる。その後に「だからどうした」が続く。
現にこいつの言動が物語ってる。
あんなにも冷たい眼差しに声色。
もう完全に俺に興味を無くしてる。
手の甲で目元を隠した。
痛い。凄ぇ痛い。
頭とか、尻とかよりも胸の奥が痛ぇ。
与えられた暴力よりも言葉の方が何よりも哀しかった。
はっきりと紡がれた雅兎の言葉を思い出してまた涙が溢れる。
これからは名前を呼んで良いって言われて嬉しかった。
お前に見られてるのは悪い気がしないって言われて嬉しかった。
何よりも、付き合えるようになって嬉しかった。
それを全部拒絶されたんだ。
このままなら部屋も変えられるんだろうな。
もう雅兎と会う事すら無くなるのかもな。
本当に、何もかもが終わるんだ。


「……おい。手ぇ退けろ」

急に聞こえたから聞き取れなかった。
でも言葉を放たれたと同時に目元を覆ってた手が掴まれ離れてく。
まだ視界がぼやけて見えねぇ。
ただ影が近付いてくる。

「ひっ…な、に…」

「汰狼」

急に生暖かいものが目元に触れたから肩が跳ねた。
何が起きてんのか理解しようとした時に俺の名前が聞こえた。
ただそれだけの事なのに胸の痛みが和らいでく。

「普通、怒るのが先だろーが。勘違いで強姦紛いの事されたらよぉ…何でまず「別れたくねぇ」なんだよ」

「え、あっ…それは…別れたく、ねぇから…」

何されてもそれしか考えられなかった。
雅兎と別れたくねぇ。
興味を無くされたと分かってもそれしか言葉が出なかった。
つかお前相手になら滅多に怒らねぇのも知ってんだろ。
なぁ、お前は今俺の名前を呼んだよな。
労るように頭を撫でてくれてるし。
興味、無くなったんじゃねぇのかよ。

「あ゙あー…くそっ!痛くても我慢しろ。最高に気持ち良くしてやる」

「え、んっ…」

答えるよりも先に唇が重なり合う。
漸く目の前がちゃんと見えた。
直ぐそこには愛しい顔。
恐る恐る伸ばした腕を引かれて首へと促された。
俺、まだお前と居て良いって事だよな?









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