みんな、それぞれ、心に秘めた想いを大事にしているのだ──。



「銀ちゃんはやっぱり最高アル! 私、一生着いてくネ!!」
「ちょっと待て、一生は勘弁してくんない? 俺、さすがにエンゲル係数崩壊生活を来年も続ける気なんかないからね。今だって、お前のハゲ親父からの仕送りで何とか賄ってるけど結構厳しいんだよ。俺の安月給じゃ限界あるんだよ!」
「じゃあ、私がガッポリ稼いで銀ちゃんを養うアル!」
「待て待て! 今の神楽じゃまともに稼げる職種とか皆無だよ!? ってか、学校では先生と呼びなさいって言ってんだろうが!」

 授業中だったはずなのだが──。
 中国からの留学生であるチャイナ娘と担任教師の騒ぐ声で、惰眠を貪っていた俺は目を覚ました。愛用のアイマスクを気怠く半分外して教卓の方を見やると、銀八せんせーに熱烈アタック中(死語)のお団子頭が目に飛び込んでくる。

「あ〜痴話喧嘩なら家でやってくれやせんか? 五月蠅くてゆっくり寝てもいられねェ」
「ちょっ……! 痴話喧嘩なんかじゃないかんね、コレッ! ってか、何で授業中に堂々と居眠り発言してんの、沖田くん!?」
 ふわぁ、と欠伸を一つ。完全に寝直すタイミングを失ってしまったようだ。
「何だよ総悟、ヤキモチかぁ? いっつもチャイナ娘に絡むと思ったら、好きな子をいじめる小学生的なアレだったとはな」
「何言ってやがんでィ。死ね、土方」
「んだとコラァ!?」

 勘違いも甚だしい。よりによって、土方なんかにそんな見当違いの指摘を受けるとは──ウザいったらない。

 俺が銀八とチャイナの関係にヤキモチ? 何をどうすれば、そんな勘違いが出来るというんだ。チャイナは確かに他の女共(ウザい雌豚)に比べれば、気が合うと言えなくもない。その倍以上に殴る蹴る、罵る嘲笑う、などのバトルを繰り広げてはいるが。──だが他の女と違うとはいっても、それは異性としての感情を抜きにした場合の話だ。
 そんな訳で、チャイナのことはさておき。俺が心底惚れているのはただ1人、他にいるのだからして──。

「そーちゃんったら、神楽ちゃんのこと好きだったのね? 私、応援しちゃうわ!」
「いやいや。だから違いますって! 誤解です、姉さん」
「あら……でも十四郎さんは、そーちゃんのこと良く見てるもの。当たってるんじゃないの?」
「やめて下せェ! 姉さんにだけはそんな誤解はされたくないんでさァ。俺は、姉さん以外の女なんて眼中にありやせん」

 俺の正真正銘、血の繋がった姉……沖田ミツバこそ、俺が惚れているただ1人の女。どんなに人がシスコンだ禁忌だと言おうとも、俺の気持ちは不変。そして、それはこれからも変わらないのだ。

「もう、そーちゃんったら! 昔からそんなことばかり言って、私のことからかってるんでしょう?」

 例え彼女に、長年思い続ける相手がいたとしても。その相手が、マヨ中毒のいけ好かないクソ野郎だとしても。

 それでも、諦めるつもりは毛頭ない。

「ってかさっさと闇に還れ、土方」
「何で俺ぇ!? いい加減にしやがれ、てめーは!!」
「ふふふ。2人とも、本当に仲がいいのね」

 ほのぼのとした姉さんの言葉で、俺たちは顔をひきつらせたのだった──。




「本当に神楽ちゃんは先生のことが大好きなんだな」
「あら、私だって先生を好きな気持ちは負けていないわよ!」
「猿飛さん、あなたのそれはウザいだけだと思うわ」

 大好きな銀ちゃん──先生が。内容があるんだかないんだか良く分からない授業を終えて、教室を出て行った後の休み時間。
 私は友人たちに囲まれて、いわゆる恋バナに花を咲かせている。

「九ちゃんは好きな人とかいないの? さっきからこちらの会話を盗み聞きしてる東城さんは除外するとして」
「そんな……僕の好きな人は、今も昔も妙ちゃんだけだよ!」
「まあ、九ちゃんったら。嬉しいこと言ってくれるわね。私も九ちゃんのこと、大好きよ?」
「おおおお、お妙さーーーーん! 俺もお妙さんのことが大好きです!!」
「うるさいわよ、ゴリラ。女の子トークに勝手に入り込んでんじゃねーぞ、テメー!」
 日常的になりつつある、ゴリラ……いや、近藤勲……いや、やっぱりゴリでいいや。姐御の蹴りが、ゴリに炸裂するのを止めるでもなく見守る。

「そういえば、ミツバちゃんは土方くんとはどうなってるのぉ〜?」

 ニコニコ私たちを見ていたミツバちゃんだったが。さっちゃんの問いに、途端に顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。

「どうって……私、病院に1年以上も入院して留年までしてしまったから」
「でも、そのお陰で土方くんと同級生になれたじゃないか。幼なじみなんだろう? 告白とか、しないのかい?」
「えっ!? そんな、告白だなんて……私、見つめてるだけで精一杯で」

 ああ、ミツバちゃんはホントに可愛い。あのサド男──沖田総悟と血が繋がっているだなんて、とても思えない。

「それにしても。さっきの、総悟が私のこと好きだとか……絶対ないアルヨ? ミツバちゃん、総悟は極度のシスコンなんだからナ。あれは絶対本気でミツバちゃん狙ってるネ! 気をつけた方がいいアル」
「そーちゃんは、私が身体が弱いのを気に病んでくれてるのよ。ちょっと過保護じゃないかしら、とは思うけれど……とてもいい子なのよ」

 確かに、復学したとはいえ、まだ体調を崩しやすいミツバちゃんを。総悟がよく気遣っている場面を見ることは多い。だが、土方──トッシーに対するあの過激なまでの敵対心といい、ミツバちゃんを見つめるあの熱っぽい眼差しといい。私には、銀ちゃんを想う自分と同じなのではないかと思えてならないのだ。

「神楽ちゃんは、結局先生とは進展はないの? せっかく下宿とはいえ、同じ家に住んでるのに……」
「うっ……だって、銀ちゃん全然私のこと女としてなんて見てくれないのヨ。二言目にはガキだのツルペタだの失礼しちゃうネ!」

 パピー……私の父と銀ちゃんは昔やんちゃなことをしていた時代の先輩後輩の仲らしい。父が仕事の関係で離れて暮らすことになり、私を1人にするよりは信用出来る銀ちゃんに預けることになったのも……そんな経緯から。今の状態では、父の信用は確かだった。──銀ちゃんには私に対して、間違いを起こすような危険性を全く感じないのだから。

「ボンッキュッボンのさっちゃんですら落とせないなんて、銀ちゃんは一体どんな女が好きなのヨ!?」
「ボンッキュッ……神楽ちゃん、今時の女子高生はそんな言葉使わないんじゃないかしら?」
「そうアルか? 銀ちゃんはグラビアとか見てよく呟いてるネ」
「……ああ、先生はマダオだから仕方ないわね」

 私がナイスバデー(by:マダオ用語)だったとしても、きっと今の銀ちゃんが振り向いてくれることはないんだろう。

 それでも、諦めるなんて絶対にありえない。私の辞書に、不可能なんて字はないのだから! 不可能を可能に変えるくらいの気合いで、私はこの恋を成就させてみせるんだ──。


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お待ち下さっていた皆さま、大変長らくお待たせいたしました!!
これより、なんちゃって3Z設定による片想いバトルの幕開けです(笑)

まずは導入部なので、細かい設定はまだ不明のままです。本筋のストーリーが始まってから本文の中で明かしていく予定です。
ただ一つだけ、声を大にして主張しておきたいことが。


親子以外の銀神は麻岡の地雷CPです

間違っても麻岡は、銀ちゃんが神楽と恋愛する話は書けません。

ではでは!皆さまの反応が気になりますので(特に沖神でないCPに関して・笑)コメントなど、たくさんお待ちしております(^^;;

'12/04/04 written * '12/04/06 up!


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