*キミに贈る──笑顔*



 神楽ちゃんと沖田さんって、付き合ってるの?


 今まで色んな人に訊かれては、違う、と否定してきた。
 どうして私があんなドSと乳くり合わなきゃならないんだと、沖田のことなんか何とも思ってないんだと、とにかく否定しまくっていた。

「お前もな〜いい加減、素直になれば? あれでも沖田くんってモテモテじゃん。いつか愛想尽かされて、楽に調教出来る雌豚に鞍替えとかしちゃうかもよ?」
「アイツは私にベタ惚れネ。簡単になびいてやるほど、私は安い女じゃないアル」
「何だよ、駆け引きってヤツ? ガキがいっちょ前に色気づいちゃってまあ……」

 だって、自信があったのだ。沖田が私を好きだという、絶対的な自信。それがあったから、自分が優位に立っているんだと──慢心していたのだ。


「えっ? お姫様?」
「そうでさァ。紀州のお屋敷から江戸に出てくるってんで、真選組で警護することになったんでィ。その警護責任者が、一番隊隊長の俺」
「大丈夫アルか〜? そんなセレブ相手に、ヘマやらかしたりしてナ」
「何でィ。ヤキモチとか妬いてくんねーの? お姫様に、このイケメンな俺様が盗られちまうとか」
「何で私がヤキモチなんか妬かなきゃならないアルか。お姫様、こんなドSに警護されるなんて同情するネ」
「ほー。そこまで言うか。よっぽどテメーの方がドSじゃね?」
「はぁ? 私をオマエみたいなのと一緒にして欲しくないアル」
「だってなァ。こんだけ好き好きアピールしてる相手捕まえて、全く靡かないところか足蹴にするなんざァ……」

 ぷぷっ。好き好きアピールだって。やっぱりこいつ、私のこと好きアルナ。にんまり笑って優越感に浸る。こういう時、確かに私はドSになっているのかもしれない。

「その警護で暫くお姫様に付きっきりになるんで、チャイナとこうして過ごすのも当分お預けって訳でさァ。……お前にしてみれば、顔見なくて済んで清々するって所だろうがな」
「分かってんじゃねーかヨ。お姫様の前で恥かかないようにせいぜい頑張るアル」
「ハイハイ。仕事だからなァ、紳士的に頑張るわ」


 その後はまっすぐ万事屋には帰らず、これから出勤だという姐御のところに寄ってみた。沖田とのさっきのやり取りを話していると、姐御の笑顔が少し困った顔に変わっていることに気づく。

「沖田さんも神楽ちゃんには苦労してるわね」
「簡単には落ちないのがイイ女の条件アル」
「それはそうね。でも、そろそろいいんじゃない? 神楽ちゃんだって、いい加減沖田さんとイチャイチャしたりしたいんでしょう?」
「なっ……イチャイチャなんて、したくないアル! 何言ってるアルか!?」
「この間、雑誌に載ってたデートで行きたいスポットランキングの特集……ガン見してたでしょう?」
「っ! あ、あれは別にアイツと行きたいとかじゃなくてっ」
「私にまで意地張らなくてもいいのよ? 銀さんや新ちゃんには照れくさいでしょうけど、女同士ですもの……ほぉら、さっさと白状してごらんなさい?」

 こわっ! 姐御の後ろに何か怖い像が見えるっ。

「今更、何か切り出しにくいっていうか……負けたみたいでイヤアル」
「あら、好きって言ったら負けたことになっちゃうの?」
「う……そうじゃないけど」

 言い淀む私に、すっと両手を差し出した姐御。黙って見ていると、不意にその両手で私の両手が包まれた。

「ねえ、神楽ちゃん。今、どんな気持ち?」
「えっ? どんな、って。姐御の手は暖かいアル」
「そう? じゃあ、この手が沖田さんならどうかしら? 想像してみて」

 今、この手を包んでいるのが沖田なら──。

「ないないないないないアリュ〜!!」

 赤面し、呂律まで回らなくなる。ああ、これでは姐御の思うツボ。

「やっぱり神楽ちゃんも女の子ねぇ。好きな人になら、手を握られたらドキドキしたり胸がきゅんと鳴ったりして当然よ。それが、恋してるってことでしょ?」
「こ、恋、アルか……?」

 姐御の言葉が、すーっと心に入り込んでくる。そうか、私は沖田に恋をしているのか。

「今度会ったら、笑顔で話しかけてごらんなさい。神楽ちゃんたら、いつもしかめっ面か蔑んだような笑い方しかしないんでしょう?」
「うっ……そうかもしれないネ。でも、何で知ってるアルか? 姐御、エスパー?」
「え、えーっとね。それは、腹立たしいことにあのストーカーゴリラに、ね」
「げっ。ゴリから筒抜けってことは、アイツったらベラベラ喋ってるアルか!?」
「それはどうかしら。たまに可愛い弟分が気になって、覗き見してるみたいよ? チャイナさんが微笑みかけてやれば総悟の奴すっごい喜ぶんだろうなぁ、ですって。あの人、ストーカーだけど、沖田さんのことは本当に大事に思っているのねぇ。そういうところだけ見たら、いい人なんでしょうけど」

 確かに、あのゴリは根本的に姐御に対する接し方から間違えているのだ。やりすぎなければ、いくらかは望みがあるかもしれないのに。例えそれが1%だとしても。



 そのゴリを、私もバカになんて出来ないかもしれない。だって、私も"好きな人"に対する接し方を間違えていたのかもしれないのだから。
 素直にならなかった、罰が当たったのだ──きっと。




いきなり悲恋ちっくですが、ちゃんとおっかぐです。最後はお得意のゲロ甘に仕上げ…られたらいいなァ(まだ出来てない)
毎日更新、頑張りますよ★

'11/06/26 written * '11/07/03 up

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