謐と無情と 5



※静雄の鬼畜度加速注意



「すげぇ、まだ入るなあ」
「…!!…はーっ、はーっ、はっ、…っ!」
後孔から細く短い棒が5本突き出ている。収縮するたびに棒がうごめきぶつかり合う様はどこか滑稽だ。
臨也は、四つん這いにさせられ背中を押さえ込まれているため身動きができない状態だった。背中に覆いかぶさる静雄は、臨也の眼前に故意に手にしていた新しい飴を翳して。荒々しい息遣いを繰り返していた臨也は、驚愕に瞳を見開いた。
身じろぎすれば、後孔でゴリゴリと飴同士がぶつかり合い、内壁にも刺激が伝わる。
「ほら、6本目だ」
「…っ、…っ」
逃げられないように背中を押さえ込まれたまま、僅かな隙間に飴を押し込まれる。ガリガリと表面を削りながらも、それは飴同士の合間にうまく収まってしまう。
痛いというよりは、異物感となによりも屈辱感が勝った。
こんなものを無理矢理突っ込まれ、気まぐれに棒を摘んでは、上下に動かされたり押し入れようとする。臨也が呻くのを見てまたひとつ愉しそうに笑われ、まるで玩具扱いだった。
「ん、は、はあ…っ」
自重を支える膝や腕が笑う。悔しくて歯を食いしばり、拳を握り締める。だけれど、弄られるたびに締め付けてしまうのも事実で、ますます静雄を喜ばせることになる。
「溶けてきたな…甘ったるい匂いがするぜ?」
「…っ」
突っ込まれて随分たつので、内部の温かさに蕩けるのも当然だろう。中がどんな酷いことになっているかなんて考えたくもなかった。
「くせぇ手前にはちょうどいいんじゃねぇかあ?」
耳元で嘲笑われ、悪戯に吐息が吹きかけられて、ついにシーツの上へと崩れ落ちてしまう。
「…何してんだ」
「……っ」
腕を引かれて体勢を戻そうとされるが、身体が言うことを聞かない。シーツに当たり、貪られた肩先の傷が開いているのだろう、じくじくと痛みに苛まれる。立て続けに奮われた暴力によって身体中は痛み、プライドを踏みにじるような行為に精神的にも限界に近い。このまま気を失ってしまえればどんなにか楽だろう。
「なんだ?せっかくイキそうだったのにうなだれてんじゃねぇか」
腰を抱えられてしまえば、尻を突き出す格好となり。頬をシーツに擦りつけ、荒々しい吐息が収まらない。力が入らない身体は静雄の支えがなければこの体勢を保持するのも難しい。
「可哀相になあ…?」
「んく…!はっ!!」
言葉とは裏腹にうなだれた自身に手をかけられ、突然握り混まれて息をすることを一瞬忘れてしまう。
「出さなきゃ身体に悪いぜ」
好き勝手なことを言いながら、静雄の掌は臨也自身に愛撫を施していく。
「んはっ、は、…っ!?」
身体は限界を訴えているのに、静雄の手の中で緩やかに漲り出す。極限状態での生存本能というやつだろうか。こんなときでも刺激されれば反応してしまうだなんて。
「せっかく手伝ってやってんだからイッておけ」
親切ぶってはいるが、傲慢にしか聞こえない。明らかに臨也にとっては拷問だ。
「ん、はっ、はあ、はあーっ」
それでも緩急つけて扱かれれば、もどかしい程に熱が集まっていく。飴を含まされた後孔も妖しく収縮する。
意のままにならない身体がこんなに恨めしいことは初めてだ。せめて声が出ればと思うが、掠れたような情けない呼吸を繰り返すだけで。
「お、イキそうか?」
「っ!」
先端を弄られ、ビクリと身体が震えた。悔しいけれど、制御できないほどの熱が解放を今か今かと待ち構えている。静雄の手つきは慣れたもので、同じ男ならば当然なのかもしれないが、それでも明らかに効率的に快楽を与えるものだった。
「ん、ん…」
根本を押さえられ顔を歪める。早く熱を吐き出したくて、思わずゆるゆると顔を持ち上げ腰を揺すってしまった。それがどうやらお気に召したらしい。
「可愛いじゃねぇか。イッていいぜっ」
「……っ、は、はあ、はあ……っ!!」
褒められ、反り返った自身を素早く扱かれたことで、呆気なく絶頂へと導かれる。
全身を小刻みに痙攣させながら、臨也は熱を吐き出した。白濁液がシーツへと飛び散り、勢いを失ってもなおトロトロと滴り続ける。散々焦らされた欲望は留まることを知らないかのようだった。
「ああ、緩んだな」
刺さったままの棒が揺らめき、後孔がパクリパクリと喘いでいる。そして、弛緩したそこは締め付ける力を失ってボトリと音をたてて2本分飴を吐き出した。しかし惰性のまま腰を揺らめかしてしまう。
涙塗れでぼやける視界に映る静雄は、臨也の痴態を見つめながら口角を引き上げる。てっきり飴を落としたことを責められるかと覚悟したのだが、逆にそのほうがマシだったかもしれない。
「その調子で自分で吐き出してみろ。俺が入れねぇしな。…もちろん、このまま入れていいなら話は別だがなあ」
「……!!」
想像するだけで背筋が凍り、慌ててフルフルと顔を振る。そんなの冗談じゃない。
「また手伝ってやろうかあ?」
「はう…っ、はあ!」
引き上げた腰を支えたまま、今度は下腹部を押される。そこは、打撲傷があるというのに、きっとわかってやっている。
「く…うっ」
押さえ込まれる反動で痛みを纏い内臓が排出に向かってうごめき出す。もはや力を失っている身体では、静雄の成すがままで、飴が出口に向かってスルスルと移動しているのがわかる。しかし、減ったとはいえ未だ複数個含まされているので容易ではない。
「ん?力抜け?いや、入れるんか?まあいい、別のモノまで出すなよ?」
「んーっ」
吐き出すために力を入れてみるけれど、ようやく1本出ただけで。まだ残っているのかと考えるだけで焦燥感と絶望感が押し寄せる。
「あと3本だなあ」
本数が減って余裕ができたからと言っても臨也にっては果てがないように感じられて。
ぐっと腹部を押されるたびに、ビクンと臀部が突き出る。見兼ねたのか、静雄が徐に棒を掴んで引きずり出す。
「う…っ、はあ…」
だけれど、ゴリゴリと内部に押し付けることを忘れないところが腹立たしい。
「仕方ねぇ。1個ならなんとかなるだろ」
「ん…っ!」
パンと臀部を叩かれ、新たに涙が浮かぶ。もどかしくてどうしようもなく、瞳を閉じれば涙が零れる。そして、臨也はとうとう静雄の言い付けを破って震える手を後孔へと延ばした。
「ペナルティー1つだな…」
静雄からは、止める代わりに皮肉げに言い渡される。何か仕置きめいたものが待っているのだろうが構ってはいられなかった。
「ん…っ、はあっ」
最後の力を振り絞り、棒を掴むと引き抜いていく。ヌプリと卑猥な音とともに、肉壁がめくれ上がるのが酷く不快で。静雄の眼前に、体液に塗れた飴が現れた頃には、臨也の痩身は小刻みに震えていた。
「く…っ」
やっとの思いで引き抜いた飴が落ちると同時に、臨也の消耗しきった身体がシーツへと崩れ落ちた。ヒクリヒクリと喪失感に後孔が喘ぎ、頼りなさげな両肩も未だ上下に揺れ動く。
つい先程まで確かに入っていたことを知らしめるかのように、後孔と最後に排出された飴が透明の糸で繋がっている。


「ネチャネチャしてて気持ち悪いんじゃないか?」
自分が強いておいてよく言えたものだと瞳を細めた。
静雄は汚物を摘むようにして飴を持ち上げその糸を断ち切る。そして、用済みだと飴はベットの下へと放り投げて。


「じゃあ洗うか」
その言葉に嫌な予感ばかりが襲い掛かるが、憔悴した臨也に抗う術はなかった。





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2011.6.22up
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