ぐしゃり、と割れてしまったそれからは透明と黄色の液体が混じり合うことなくただでろりと流れ出ている。
「…ふふ…っ…あはははっ…!!僕は…僕が卵を…殺したんだっ!!!!あははははっ…!」
少年は楽しそうにげらげら笑いながらひたすらに卵を床に投げ続ける。

「…それは無精卵だよ」

不意に後ろから声を掛けられびくりと振り向くと見慣れた少女が立っていた。
「その卵をいくら割ったって、その卵に命はない。」
「…はァ?」
ぎろり、と少女を睨みつけるも、当の彼女は微かに首を傾げ、首もとまで切りそろえられた髪の毛の先が揺れただけだった。
「君は、臆病だから。卵という命を殺して鬱憤を晴らそうと思ったんでしょう?…私を殺した奴を殺す勇気も、自分が一緒に死んでく勇気もないから。」

「…ち、がう。違うっ!!!殺したのは…違うんだ…それは、」少年は頭痛が起きた時のように頭を押さえうずくまる。

「…言い方を間違えたかな?両方一緒なようなものだもんね…だって私を殺した犯人は…」

「やめて…それ以上、言わない、で…っ」

少女は愛おしそうに、叫びながらうずくまる少年を見つめほわりと微笑んだ。
「…そんな臆病な君が、殻を割れた瞬間だったんだよね?あれは。…おめでとう。私は君が大好きよ。」


ーーーーーーーーーーー


「昨日のの深夜3時頃、15歳の少年が、同じく15歳の少女を殺害するという事件が起こりました。尚、殺害された少女は少年の幼なじみとみられ、犯行の原因は…」
いつもと似たようなニュースを聞き流しながら朝食の目玉焼きを作るべく卵を手に取った。

こんこん、ぱかっ


(僕と彼女と卵と卵)

さようなら、いのち

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