きちんと、きれいに並べられているぬいぐるみ達。
フリーセルはそれのひとつを優しく撫でた。
彼女は、メランコリィは、いつもどんな気持ちでこのジェット機に乗っていたのだろうか。
三人乗ったってすこし寂しいくらい広いこの機内で、一人。
そう思うと胸がきゅっと締め付けられるように痛む。
それを少しでも和らげようとまたぬいぐるみを撫でようとしてふと、山のようにあるそれらに埋もれるように、あるいは隠すようにして置いてあるぬいぐるみがあるのに気がついた。

「これ…」

周りのぬいぐるみを倒さないようそっと取る。桃色のうさぎのぬいぐるみ。目元に水色で涙の刺繍がしてあった。
このぬいぐるみを抱きしめ、メランコリィは寂しさに耐えていたのだろうか。
「ごめんね…」
彼女自身に触れることは、ましてや頭を撫でることなんて、きっと許してくれないだろう。
だから代わりに。彼女と同じ時間を過したこの小さなウサギの頭をゆっくり、思いっきり優しく撫でる。
どうか、これからは少しでも、彼女と君が寂しい思いをしませんように。


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