驚いて、どうしたの?ととぼけたように笑っていたら良かったのに。
気が付いたら縋るように黒い革ジャンの裾を握ってしまった。
きっと彼は勢いで行動してしまっただけなんだからこんなことしたらギャモンは困るだろう。
わかっているのに。
ぐるぐる頭で考えていたって、なんにもならない。
ギャモンくんがわたしを抱きしめているという状況は変わっていないのだから。
「そんな顏するくらいならやめときゃいいのに」
一瞬その台詞が彼のものかわたしのものかわからなくなった。
声や口調は確かにギャモンくんのものだったのだけれど、そんなことを彼から言われるなんて思っていなかった。
だって、だってそんな台詞。
「…悪かった。」
黙っている私を怒ったんだろうと思ったようでギャモンくんはそう言いながら私の頭を遠慮がちに撫でる。
謝られる資格も、こうやって彼に抱きしめて貰う権利も、私はないのだけれど。
それでも、彼の優しさに甘えてしまう私は。
「ずるいよ」
聴こえないように、小さくそう呟いた。
(わたしも、あなたも。)

← † →
back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -