赤城企画

遅い、遅すぎる。
リビング、というには少し狭い部屋。
わたしはリビングに置いてある時計とにらめっこをしていた。
時刻はもう、夜中の12時をとっくに過ぎている。
サークルの飲み会がある、と同棲相手であり恋人である赤城に言われたのは今朝のことだった。
「えっと、いつ?」
「今晩」
「えっ、今晩!?」
突然の報告に動揺していると、赤城もめずらしくバツが悪そうに目をそらした。
「その、悪いとは思ってる」
「えっと…お夕飯、食べとくね。」
「あ、ああ。ゴメン」
「別に大丈夫だよ。楽しんできてね」
「ありがとう」

そんなやりとりを思い出しては、また溜息をついた。
寝ててよかったのに、と帰ってきた彼が困った顔をすること位判ってる。
意地っ張りだ、と怒られるのだって予想ができる。
それでもやっぱり、彼の帰りを待てずにはいられなかった。
別に、遅く帰ってきた彼を責めるつもりなんて無い。
ただ、帰ってきてくれた彼を「おかえり」と迎えたいだけなのだ。

重いって思われるかな、寝てたほうがいいかな。
不意にそんな考えが頭をよぎり、抱えていたひざに顔を埋めた。
「もう寝ちゃおうかな…」
呟いた言葉が部屋に響く。
その声があんまりにも弱弱しくてあかりはまた俯いてしまう。

ガチャ。
ドアノブをまわす音に、顔をあげた。
「…!」
立ち上がって、玄関まで駆けていく。
「赤城くん、おかえりなさ…わっ」
「ただいまあ」
玄関先で、ぎゅうといきなり抱きしめられた。ふわりとお酒臭い匂いがする。

「ね、ちょ、」
「んー?」
待って、と彼の背中をたたいて反発するも、首筋に顔を埋められ、掛かる息に力が抜ける。
「あの、まず、靴、脱いでから」
自分の声も酔っぱらった赤城くんの声と同じくらい上擦っている。
「ははっ、みみ、まっかだ」
「赤城くんには言われなくな…んんっ」
呂律が回ってない彼が耳元でそう囁いたかと思うと、ちゅっと口付けが落ちてきた。
「かわいい、」
「わ、あか、ぎ…くん…っ」

繰り返されるキスはほんのりアルコールの香りがして、私まで酔っぱらってしまいそう。
ここ、玄関なんだけど…なんてセリフも飲み込んで、目を閉じ彼の背中にしがみついた。




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