04


「ありっ? 的場さん、また出かけるんですか?」



昨日、的場さんは何処かに出かけた。そして今日、また何処かに行く支度をしている。的場さんから借りた妖についての本を読むのをやめ、的場さんに聞くと、的場さんは私の顔を見てニッコリと微笑む。



「皐月も一緒に行くんですよ」
「…………え?」



 ***



的場さんに着いて行って辿りついたのは、とある小さな神社だった。誰も来ていないのか、その神社はどこからどう見てもボロい。この神社に何かしらの力があるとは思えないし……、的場さんは何しに此処に来たんだろう……。



「此処に凶暴な妖が居るようなのですが、皐月、邪の心を払いなさい」
「っはぁあん!!? 私、札持ってきてないですよ!!?」
「それなら此処に」



的場さんの言葉に驚いて首を横に振ると、的場さんが何処からか、私の部屋に置いてあったはずの札を出した。私は「あれっ?」と的場さんが持っている札を唖然と見る。いや、確かに私の部屋に置いてきたのに。的場さんめ、私の部屋に無断に入って持ち出したな……。



「……最初から決まってることなら、あらかじめ私に言ってくださいよ」
「ふふ、皐月の反応を見たかったもので、つい」



そう言いながら微笑む的場さんは、正にイケメン。何も言い返せないぜ、チクショウ。ふと、どこからか「ピーピー」という鳥の鳴き声が聞こえてきた。そちらへ顔を向けると、まだ小鳥であろう雀が一人で親鳥を探しているではないか。……まるで私だ。



「……的場さん」
「何でしょう?」
「もし私が、急に元の世界に帰ったらどうしますか?」



俯いて聞く私。私ってばどうしちゃったんだろうな。此処に来る前までは的場さんのこと苦手だったのに。……いつの間にかそんな苦手意識も消えて、まるでお兄ちゃんみたいに……。



「どうもしません」
「……そうですか……」



的場さんの言葉に、私は秘かに傷ついた。的場さんにとって、私とは所詮にそんなものだったのだ。眉間に皺を寄せていると「でも……、」と的場さんが言葉を続ける。私は思わず、顔を上げて的場さんの顔を見た。



「――いなくなられたら、寂しいですね」
「っ!! ほっ、本当ですか……!!?」
「はい」



ニコリ、と微笑む的場さんに私は思わず満面の笑みになった。嬉しい。私は的場さんに必要とされているんだ。



「ふふ、、やはり皐月には笑顔がよく似合う」
「っ、からかわないでくださいっ!!」



的場さんに言われたことが嬉しくて、私は赤面しつつも反攻した。だが、その反攻は的場さんの微笑みで効かなかった。少し悔しくなりつつ、的場さんには適わない、と大人しくする。



「時に皐月、昨日の昼……、私が出掛けている時、友人ができたそうですね」



その言葉に、私はパチパチと数回瞬きをする。もしかしなくても、それは田沼のことだ、何故知っているのかは知らないけれど、妖に後を付けさせたのだろうか。本人に聞いたら「用心棒として」なんて上手い具合に嘘を言われるかもしれない。「あの男の子も、妖が見えるようで……」と薄ら微笑む的場さん。その時、私はゾッとした。背筋が凍ったように急に肌寒くなる。友人帳を持つ夏目は的場さんに狙われている……、もしかしたら田沼も、的場さんに何かされるかもしれない。



「た、田沼を巻き込むのはやめてくださいね!!?」



慌てた表情で的場さんに言う私。的場さんは笑みを浮かべながら「大丈夫ですよ」と言った。何が大丈夫だというのか。「しっかり見えるのなら兎も角、ぼんやり見える程度の者を的場一門に入れて何になると言うのですか」と言われ、それもそうか、と思う。しかし、それと同時に田沼を貶された気がしなくもない。モヤモヤとする複雑な感情が嫌で眉間に皺が寄る。田沼が狙われないのならそれで良いんだけど……、うーん……。やっぱり複雑。



[*前] | [次#]
[表紙へ戻る]

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -