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やっと皆の元へ追いついた。だが、すでに皆は遠呂智の所まで来ていた。「お待たせしました」と声をかけると、皆が私達に顔を向ける。少し恥ずかしい。少し向こうを見れば、遠呂智が口や体から血を流して倒れていた。そんな遠呂智のそばに駆け寄っている妲己さん。どうやら、終わったようだ。



「……皐月、か……?」



意識が朦朧としている遠呂智であったが、その目はしっかりと私をとらえていて、手は私を求めているかのように伸ばしている。遠呂智に近寄りながら、「誤算だったよね、遠呂智」と私はそう言う。皆は何のことか分からず、首を傾げている。



「未来を消せば、未来で生まれた私はこの世界に存在しなかったことになる。それってさ、遠呂智が消した過去が存在しなくなるってことだよ」



私の言葉に、遠呂智は「何、を……」と途切れ途切れながらも言う。そして、私は伝える。「私は、確かにこの世界の存在を知ってた」と、「だから、皆と仲良くなれたことを幸せに思うの」と。私の言葉を聞き、遠呂智は「その”皆”に、我は入っておらぬな……」と悲しげに呟いた。なんで、この人はそんなに私に関わろうとするんだろう……。



「好きだよ、ちゃんと。かぐや達も、半兵衛さん達も、……遠呂智も」



私の言葉に、遠呂智は驚いた表情をする。だって、好きじゃなきゃこうやって近寄って話そうとはしないじゃない。



「つか、なんで遠呂智は私を狙ったわけ?」
「……分からぬ。だが、何かを感じたのだ。我は、それを手に入れたい衝動にかられた」



何それ、理解できない。「んー…?」と唸りながら首を傾げる私に、遠呂智はフッと微笑む。そして、「我が、恐くないのか?」と聞いてきた。確かに、最初は怖かったけれど、今は怖くない。よく分からない為「どうだろ」と答えると、「変わっているな」とかえってきてしまった。失礼な。まるで、今まで仲良かったかのように話す私と遠呂智。きっと皆はヘタレな私が遠呂智と普通に話してるの見て吃驚してるんだろうな。本当、私でも不思議。



「ッ皐月、その体……!!」



そんな時、かぐやが切羽詰まった声でそう言った。私は自分の体を見て驚いた。今、私は消えかけてる。いつの間にか私の体は少し黄色く光っていて、薄くなっていた。慌てて田沼と斑を見ると、二人も同じのようだ。



「かぐや、これ」
「え……?」



かぐやに、私が以前来ていた中華服を渡す。かぐやは唖然としながらも中華服を受け取る。そして、戸惑いながら「これは……?」と聞く。私はニッと笑みを浮かべて答える。



「私の形見だと思って持っててよ。そしたら、また会えるかもしれないじゃん?」
「ッ……大事に!! 大事に持ってますから……!!」
「うん、ありがと」



涙目になっているかぐや。私はそんなかぐやの頭を優しく撫でる。ああ、駄目だよ。泣かないで。私まで泣けてきちゃうでしょう。さっき、あんなに泣いたのに。そんな時、「その形見とやら、あたしにも寄越しなさい」「あたしにも!!」と、甲斐さんとくのが手を差し出した。私は吃驚しながらも、くのに制服のスカーフ、甲斐さんにハンカチをあげた。



「これで別れても、もしかしたらまた会えるかもね」
「あたしんとこ、遊びに来てよねんっ」
「行けたら、絶対に行くよ」



帰ったら、的場さんに異世界に行ける妖術を教えてもらおう。もしかしたら禁忌の術かもしれないな。まあ、まずそんな術があるか分からないけれど。



「皐月殿、私にも何かくれませんか?」
「え、あ、はい」



甲斐さん、くのと笑い合っていると、姜維さんもそう言ってきた。吃驚した。姜維さんまで貰ってくれようとするなんて。姜維さんには、妖術で使うかもしれないと常備していた筆をあげた。姜維さんはニコッと笑みを浮かべ、「家宝にします」と言ってくれた。



「あの、よろしければ私にも」
「え、貂蝉さんもですか?」
「ええ、奉先様も欲しいでしょうから」



チラッ、と呂布さんを見ると、ムスッとした表情でそっぽを向いていた。私は苦笑しながらも「それじゃ、これを」と、手首につけていた髪ゴムを二つ渡す。二つなら貂蝉さんと呂布さん、両方持てる。貂蝉はそれを「有難う御座います」と言って受け取ると、ひとつを呂布さんに手渡す。呂布さんは「フン」と言いながらも受け取ってくれた。



「皐月」
「夏野」



名前を呼ばれ、私は斑と田沼の元に駆け寄る。もう限界だ。体が寸前まで薄くなっている。最後に笑おう。精一杯の愛を込めて、皆に。



「私、皆さんのこと結婚したいくらい愛してます!! また、いつかお会いしましょう!!」



絶対、また会える。



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