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「お待たせしましたッ!!!」と小走りでスサノオの元へ行くと、スサノオの他にも、曹操さん、劉備さん、夏候惇さん、徳川家康さんが居た。どうやら彼等が、私の元へ来ないようスサノオさんを足止めしてくれていたらしい。



「おっ、お初にお目にかかります。的場一門の一員、夏野皐月ですっ!!」



スサノオさんの前に立ち、噛みながらもそう言い、軽く頭を下げる。私よりも明らかに背が高いスサノオさんのオーラは凄まじく、偉大なものだ。スサノオさんは私の言葉に「存じている」と言い「いつもはブサ猫がそばにいると聞いていたが?」と聞いてきた。



「あの猫は、その、昼寝をしておりまして……」
「……そうか、それなら好都合」



え、何が好都合なのかな。この人、もしかして斑が妖だということを知っているのだろうか。斑は一応私の相棒でもあり用心棒でもあるし、攻撃をしないという保障はないから居ると面倒だったのかもしれない。とりあえず……、



「皆さん、二人だけで話がしたいんです。すみませんが、席を外していただけますか?」



私の言葉に夏候惇さんが「しかし、それではお前がッ……!!」と驚きながら言う。けれど、これは二人で話合ったほうが争いが起きないだろうから、私は「大丈夫です、大丈夫ですから」と笑ってみせる。曹操さん達はいまだに腑に落ちない、という顔をしているが渋々私達に背中を見せて歩いて行った。



「――…スサノオさん、早速話しましょうか」




 ***




「――…汝は遠呂智に狙われている。正直、あの者等では手におえないであろう」
「つまりは……?」
「我と共に来い」



……やっぱり。私の存在が遠呂智や清盛の手に落ちては世界に危険が及び、討伐軍では私を守ることが不可能である為、行動を共にしろ、ということらしい。でも、自分のことは出来る限り自分で守るし、皆のことも信用している。だから……。



「すみませんが、それはできません」



スサノオさんの目を見て、キッパリと断る。私の言葉に、スサノオさんは「何故だ?」と眉間に皺を寄せながら問う。「皆を信じているからです」と、そう答える。だが、スサノオさんは納得していないようで「妖はどうするつもりだ?」と聞いてきた。



「妖は、お前を狙っている。……何故殺さない? 殺せば、狙ってくる妖は確実に減る」
「妖を殺すのは、人を殺すのと同じです。私は、そんなの望まない」



私の札は、妖を殺す物じゃない。全ては、妖を生かす為。妖を敵だと疑わないようなスサノオさんの口ぶり……、もしかしたらスサノオさんは、私の味方をしてくれている斑まで殺すかもしれない。もしそんなことが起きるのならば、私が止めなければ。



「私に何を言っても、私は彼等から離れることはありません。お引き取りを」



そう言って頭を下げる。これで帰らないのであれば、強行突破として戦わなければならない。頭を下げて数秒経ったが、スサノオさんからの返事はない。



「――…後悔するぞ」



その言葉に、私は頭を上げてスサノオさんの顔を見る。そして言ったのだ、「するのであれば、とっくにしているはずです」と。スサノオさんは私の言葉を聞き、「そうか」と微笑んだ。スサノオさんが笑みを浮かべるなんて、正直驚いてしまった。



「……どうやら、汝等の絆は深いもののようだな」



そう言ってとある場所を指さすスサノオさん。なんだろう、と思いつつ指の方を見る。思わず「あ……」と声を漏らす。そこには、先程席を外してもらった曹操さん、劉備さん、夏候惇さん、徳川家康さんが此方を睨みながら様子を見ていたのだ。



「帰るフリをしてずっと隠れてこちらを見ていたぞ」
「え!!? 全然気づかなかった……」



試しに、曹操さん達に笑顔で手を振ってみる。……あ、劉備さんがにこやかに返してくれた。だが、他の人達は未だにスサノオさんを睨んでいる。ふと、スサノオさんの手が私の頭の上に乗った。驚いてスサノオさんを見ると、「この世界での皐月の居場所は、あの者等の所しか無いようだな」と言う。認められたんだ、と思って私はつい微笑む。



「スサノオさんが思っているよりずっと、彼等は強いし賢いんですよ」
「ああ、そのようだな」



「さて、」と言って私に背を向けるスサノオさん。「行っちゃうんですか?」と聞くと、「ああ」と短く返事が返ってくる。お茶でもしていけば良いのに、と思ったけれど、皆警戒しているから無理か、と勝手に納得する。スサノオさんは「また、いずれ」とい、背中を向けて行ってしまった。今度は、いつ会えるのだろう。もっとお堅い恐い人だと思っていたけど、なんだか優しかったな。



「皐月!! 無事か!!?」



夏候惇さんの声が聞こえ、そちらを見ると、皆心配の表情を浮かべながら私に駆け寄ってきてくれた。私は笑いながら「はい、大丈夫ですよ」と返事をする。



「何か攻撃を仕掛けてくると思ったが……」
「何も無くて安心したぞ」
「ご心配おかけしました」



曹操さんと家康さんの言葉に、少し頭を下げる。顔を上げて曹操さん達の顔を見ると、皆安堵の表情を浮かべている。そして再び「心配したんだからな」「もう無茶はするな」と言われてしまった。



(あ!! 皐月!! by.夏侯覇)
(お待たせしましたー。 by.皐月)
(怪我とかないか!? 何もされなかったか!? 大丈夫だったか!!? by.夏侯覇)
(だ、大丈夫ですよ。 by.皐月)



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