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「もう、無茶はしないでくださいね。……皐月が傷つくと、凄く悲しいのです」



そう言い、私の手をぎゅっと握るかぐや。その顔は泣きそうで儚い感じがする。私はかぐやの言葉に「ありがとう、分かったよ」と返事をする。かぐやは私の言葉を聞き、にこっと微笑んだ。その時、半兵衛さんが「そういえばさー、」と言いながら私に歩み寄ってきた。



「皐月殿の言う、的場さんと田沼って誰?」



半兵衛さんの言葉に、私はそういえば二人のことを説明していなかったな、と今更ながら思う。



「的場さんは私の上司、田沼は友人です」



私の言葉に、半兵衛さんは「へえ」と言う。何故だろうか、私が言った瞬間、何故か心がモヤッとした。……うん、的場さんは上司で、田沼は友人、で合ってる。……田沼は、私にとって本当に友人だけの存在だろうか。違う。田沼は、私にとって……。



〜♪〜♪



モヤモヤしたままでいると、私の携帯が鳴った。皆はいきなりの事に吃驚して固まってしまった。思わず苦笑する。私は携帯を開いて「もしもし?」と通話ボタンを押して言う。



≪よっ、夏野≫



携帯の向こうから聞こえてきたのは、田沼の声。「はあっ!!?」と言いつつ、私は慌てて携帯の画面の文字を見る。そこには「田沼 要」の文字。田沼の携帯番号を登録した覚えなんてないのに、なんで……。



≪怪我とか、してないか?≫



向こうから私を心配する田沼の声が聞こえ、私は携帯を耳にあてて「大丈夫、してないよ」と返事をする。すると次は「一人で抱え込んだりしてないよな?」と聞いてきて、私は苦笑しながら「してたら皆に怒られた」と言う。田沼は痛いところをついてくるけれど、それはどれも私を心配して言ってくれる言葉だから嬉しい。



≪お前って、ほんと夏目に似てるよな≫
「そう?」
≪ああ、めちゃくちゃ似てる≫



斑にも言われたけれど、どこがそんなに似ているのか。思い当たる節がない為「うーん?」と考えていると、



≪……夏目がな、お前の事疑ってる≫



田沼がそう言った。その言葉に、私は夏目と初めて会ったときを思い出す。かぐやと一緒に団子を食べていたときに、たまたま田沼達と会って、夏目ともお互いに名前を教え合った。けれど、そこに運悪くも的場さんがきて、的場さんは夏目にとって敵のようなものだし、そのまま的場さんと親しい私やかぐやのことも警戒していた。



≪お前と的場さんに近づくなって言われたんだけど、その……≫



どうやら田沼は、私とかぐやが居なくなったことを的場さんから聞き、自分から私達を探す手伝いを申し出たらしい。夏目に言われているにも関わらず私を探してくれたことは嬉しいけれど、もし夏目にそれがバレたら、田沼と夏目の関係性はどうなるだろうか。せっかく友達になれたのに、私のせいでその関係が壊れてほしくない。



「……田沼、色々ありがとう。巻き込んでごめん」
≪何言ってるんだよ。俺は巻き込まれたんじゃない。夏野の力になりたくて、自分から巻き込まれに行ったんだ≫



田沼はお人好しだ。自分が危険な目に合おうとも、私や夏目の為に何かをしてくれようとしている。そんな田沼だから、私も夏目も心を許した。



≪……なあ、夏野≫
「ん?」
≪――…死ぬなよ≫



田沼の一言。その優しい一言だけで、私の心は自然と暖まる。トクントクン、と少し高まりつつある鼓動に気付きつつ、「死なない、絶対に死なないよ」と田沼に言う。田沼は私の言葉を聞き、「ああ」と安心したように呟いた。……好き……、好きだよ、田沼。



「あ、かぐやに代わるね」
≪え?おい、≫



田沼が何かを言っているのを無視し、かぐやに「はい、」と携帯を渡す。かぐやは少し緊張した顔で携帯を受け取り、「も、もしもしっ」と田沼に声をかけた。会話を始めるかぐやと田沼。緊張しながらも丁寧に話すかぐやを見ていると、「あれは一体……?」と左近さんに話しかけられた。



「ああ、アレは携帯と言って、遠くの人でも連絡がとれるカラクリです」
「遠くの人でも!!? ……へえ……、それは便利だ」



興味深そうに携帯を見る左近さん。「後で使ってみますか?」と聞くと、「良いんですかい!!?」と驚いた表情で聞いてきた。苦笑しながら「壊したりしなければ」と言えば、左近さんは嬉しそうに笑みを浮かべる。余裕の笑みじゃない左近さんの笑顔はなんというか、新鮮な感じがする。



(何故、そんなに皐月を助けてくれるのですか……? by.かぐや)
(……友人だから、と言いたいところなんだが、多分、好きなんだろうな。 by.田沼)
(好き……。 by.かぐや)



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