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董卓の体が飛び、二、三回地面で跳ねて落ちた。ズザザザァ!!、と私はドリフトをやって原付バイクを止める。正直、ノリでやった為、何故できたか不明。「ぬぐぐぐぅ……」と董卓が苦痛な顔で起き上がる。相変わらず汚い顔をしている。



「い、一体何が……? ……むっ!!? 貴様、あの時の小娘!!」
「チッ……!! しぶとい、さすがは豚!!」
「喧嘩を売っとるのか貴様ァ!!!」



額に青筋を浮かべ、私に怒鳴り散らす董卓。あの顔、ムカつくわ。本当、どうにかしてイケメンさんに変えたい。そしたら、あの性格も「ああ、ツンデレなのね」的なノリで終わるのに。



「皐月、ナイスだ」
「だろ。ま、私にとっちゃあんな奴楽勝だけd――ドゴッ!!――おっふあ!!?」



いきなり腹に何か突っ込んできた。その衝撃で私はバイクから落ちて、背中を打つ。めっちゃ痛い、泣きそう。一体何が起きたんだ。



「無事だったのですね、皐月!!」



懐かしく聞き覚えのある可愛らしい声。その声は、私のお腹の方から聞こえた。ああ、そうか。お前だったのか、私に突進してきたのは。いや、お前は突進じゃなくて抱きついたつもりで来たんだろうが。優しく、頭に触れてみる。顔を見ると、凄く嬉しそうな顔をしていた。良かった、元気そうで。「久しぶり、かぐや」と頭を撫でつつ言いえば、かぐやは満面の笑みで「はいっ!!」と言った。



「フフン、相変わらずラブラブですな、二人ともっ」
「良いなあ、かぐやさん。俺も皐月殿に抱きつきたーい」



駆け寄ってきてくれたくのと半兵衛さん。私は苦笑して、かぐやを支えながら起きあがる。服に、結構土がついた。それを手でパンパンッと払う。遠くにいる馬超さんや司馬昭さんに視線を向けると、「おーい!!」と私に手を振っていた。それに続き、「早くこっちに来てくださいよー」と左近さんが言っている。



「行こっ!! 皐月ちんとニャンコ先生に、紹介したい人達がたくさんいるのっ!!」
「それと、皐月殿の事もちゃーんと紹介しなきゃね」



二人の言葉に「はい」と頷く。倒れた原付バイクを起こし、自分で引っ張って歩く。皆細かい傷はあるものの目立った傷はないようだ。良かった。皆が集まっている元へ行くと、司馬昭さんが私の頭をガシガシと撫でて「久しぶりだな!!」と笑顔で言ってくれた。返事をしようと口を開くが、



「……その枷、どうしたの?」



と、元姫さんに痛い所を突かれた。「あー…、えっと、その……」とどもっていると、「儂を無視するなァァアアア!!!!」と怒鳴る董卓の声。すっかり忘れていた為、「あ」と声に出しながら董卓を見る。



「小娘、名を夏野皐月と言っておったな?」
「ええ、まあ」
「思い出したぞ。夏野皐月、お前は妖を操る事のできる小娘!!」



……ああ……、また、その話か。



「私は、妖を操ることはできないよ。できるとすれば、私じゃなくて夏目」
「夏目……?」
「……皐月、その話、あまり話してはならん」



斑の言葉に、私は思わず苦笑する。そうだ、斑の言うとおりだ。夏目を話題にあげちゃいけない。もしかしたら、夏目まで巻き込んでしまうかもしれないのだから。「うん、分かった」と言ったその直後、



「居たぞ!! あそこだぁぁあ!!」
「待てェェエエエ!!」
「うおおおおおお!!!」



先程まで私を追いかけていた清盛の軍が走ってきた。早く、この場から逃げないと。でも、皆はどうしよう。このまま、斑と一緒に逃げるしかないのだろうか。「追われているのか」と董卓に言われ、私は「関係ないでしょ」とムッとしながら返事をする。



「逃げるぞ、共に」



私の頭に手を置き、そう言うのは父様だった。父様を見上げると、珍しく微笑んでいた。私を安心させようとしてくれているのだろうか。



「そうですね。皐月、旅に出るのはもうやめてください。凄く、凄く心配でした……」



泣きそうな顔をするかぐや。その表情は本当に心配してくれていたことがよく伝わる。私は嬉しさのあまり笑みを浮かべ、「うん」と頷く。



「可愛いお姫様の為なら、私は言うことを聞くよ」
「なっ!! もう……!!」



顔を赤くするかぐやに、私は思わず笑った。そして、斑に顔を向ける。なるべく敵を減らそうと「斑、董卓捕まえてきて」と言うと、「うむ」と頷いてくれた。そして、ポンッ、と音を立てて妖怪姿になった斑。そのまま斑は董卓のもとへ行き、「っうおおお!!?」と青い顔をして怖がっている董卓を無視し、董卓を口にくわえてこちらに戻ってきた。



「逃げましょう!!」



かぐやの言葉に、私はバイクに乗り、他の皆は馬に乗って逃げた。……うん、私の事を知らない人達がジロジロ見てるのは気にしないぞ。



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