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拠点地に戻ると、半兵衛さんや馬超さん達が既に居た。ぞろぞろと拠点地の中に入ると、半兵衛さんが私達に気づいたのか、「おかえりー!!」と言いながら笑顔で走ってきた。そんな半兵衛さんに対し「ただいま」「ただいま帰りました」と、皆それぞれ返答する。私も「ただいま」と言ったところで、半兵衛さんが「あっ!!」と声をあげた。



「皐月殿、来て来て!!」



驚いている私を余所に、半兵衛さんが私の手首を掴んで何処かに歩いて行く。私は頭に「?」を浮かべながらも半兵衛さんについて行った。すると、「官兵衛殿ー!!」と黒田官兵衛の名前を呼んだ。私は官兵衛さんと初対面。半兵衛さんは「じゃーん!!」と言って私を官兵衛さんの前へと押し出した。



「……娘……?(少々顔色が悪いな)」
「ど、どうも……(思った以上に顔色悪い……)」
「この子、夏野皐月っていって、顔色悪いところが官兵衛殿に似てるんだっ」



少し眉間に皺をよせながら私を見る官兵衛さん。じっと見られていることに動揺し緊張してしまう。なんとか平常心を保とうとするが、視線が段々と泳いできていることに気づいた。誰かお助け。



「私は黒田官兵衛だ。秀吉様の軍師を務めている」
「あ、はい。存じ上げております。えっと、改めまして、夏野皐月です」



官兵衛さんが名前を言ってくれた為、私も名前を言って軽く頭を下げる。改めて官兵衛さんを見ると、官兵衛さんの顔色がすこぶる悪いということが分かる。半兵衛さんが言うように、私もこんなに顔色が悪い時があるのだろうか……。



「……私のことを父上と呼ぶように」
「えっ」



急にそんなこと言われ、私は声に出して驚いてしまう。どうしよう、この人の性格全然掴めない。つか、半兵衛さん超笑い堪えてるし。助けて下さいよ。その時、誰かに肩を叩かれた。後ろを振り向くと、司馬昭さんが居た。



「そろそろ、お前の事話してもらえないか?」



司馬昭さんの言葉に、私は凍りつく。いつの間にか隣に来ていた斑に視線をうつすと、斑は私を見ていた。……これはもう、話すしかないか。私は司馬昭さんに視線を向け「分かりました」と頷く。




 ***




司馬昭さんに皆を集めてもらった。皆の視線が私に突き刺さる。そのことに緊張するけれど、こればかりは仕方ない。ちなみに、かぐやと斑は私の隣に居る。



「えーっと……、初めましての方もそうでない方もこんにちは、夏野皐月です。私には、妖が見えます」



少しスピーチっぽい出だしをしたけれど、早速本題に入る。私の「妖が見える」という言葉に、皆がざわつく。普通の人からすれば信じられないことかもしれないけれど、これは事実。妖蛇や遠呂智という存在がいる為、皆には信じてもらえるだろう、と思っている。



「私は的場一門という妖関係の仕事をしている組織に入っています。私の仕事は妖の邪、つまり悪い部分を祓うこと。そして、この不細工な猫も、妖です」



そう言い、私はニャンコ姿の斑を抱き上げる。斑は「不細工」という言葉が癇に障ったのか、「不細工言うな!!」とすぐに文句を言った。今は喧嘩をしている場合ではない為「うるさい」と一刀両断する。ふと皆を見ると、皆が斑を見て唖然としていた。



「フン、本当の姿を見せてやろう」



斑もざわついている皆に気づいたのか、得意げな顔をして私の腕の中から抜け出し、地面に足をつける。ポンッと煙を立てて現れたのは、大きな白い狐の妖。本来の姿である斑の姿を見て、より一層皆がざわつく。



「私には全ての妖が見えますが、どうやら半兵衛さん達には見える妖と見えない妖がいるようです」
「かぐちんは仙人だけど、妖見えないの?」



ふとした疑問を言ったくのに、かぐやは首を横に振る。



「いいえ、私も皐月と同じように全ての妖が見えます」



かぐやの言葉に、元姫さんが「仙人、凄いわね……」と呟いた。私も思います。



≪私のことはニャンコ先生と呼ぶが良い≫
「ニャンコ先生? ……でも、皐月さんは斑って呼んでますよね?」
「ああ、妖の姿では斑、猫の姿ではニャンコ先生なんですけど、私はめんどいので斑で統一してるんです」



左近さんが質問した内容について答えた。彼が「成程」と納得している間に、皆、和気あいあいと斑と会話をしている。良かった。仲間になってくれた人達が、とても良い人達で本当に良かった。心なしか、斑も微笑んでいるように見える。



≪皐月、≫
「んー?」
≪明日から旅に出るぞ≫



………、へ……?



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