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本陣で、馬超さん達の帰りを待つ私達。誰もが無言で、馬超さん達の心配をしている。なんだか落ち着かないでそわそわしていると、座っている私の隣で寝ているくのいちが目を覚ました。いち早く気づいたかぐやが駆け寄り、上半身を起こすくのいちを支える。



「具合は、いかがですか?」
「大、丈夫……。此処は……?」
「妖蛇討伐の為、結成された軍の本陣にございます」



警戒していたくのいちは、かぐやの言葉に「妖蛇討伐……」と呟き、私達の顔を見渡す。その中には、戦国で有名な半兵衛さんの姿もある為、「そっか」と納得したように頷く。しかし、すぐに悔しそうな表情をする。



「忍が操られるなんて……、面目ない……」
「忍が操られる程強力な術だったって事だろ? 仕方ねぇって」



くのいちの頭をポンポンと撫で、慰めようとする司馬昭さん。くのいちはそんな司馬昭さんの言動に励まされたのか、少し微笑んだ。その笑顔がなんとも可愛くて、



「うん、やっぱ女の子は笑顔が一番だよね」



と思わず声に出して言う私。すると、くのいちは私の顔を見て目をパチパチとさせた。「どうしたのかな」なんて思いながら見ていると、くのいちは「あははっ」と元気に笑う。「君だって女の子じゃん!! おかしな子〜」そう言ってクスクス笑うくのいち。「おかしな子」というのは否定したいけれど、くのいちが元気になったことのほうが嬉しくて、私も一緒に笑う。そんな私とくのいちを見て、かぐやも微笑んだ。そんな中、



「帰ったぞ!!」



という声が聞こえた。それは紛れもなく馬超さんの声で、私は本陣の出入り口に顔を向ける。そこには、多少傷を負っているものの目立った傷はない馬超さんの姿。その後ろには、馬超さんと同じく多少傷を負っているだけの、馬岱さん、ホウ徳さん、黄忠さんが居る。



「無事で良かったよ、馬超殿」
「ああ、心配をかけたな」



すぐさま半兵衛さんが駆け寄り、馬超さんと話し始める。私もそれに混ざりたくて、馬超さんと半兵衛さんの元へ行った。馬超さんは私の顔を見て、ニカッと笑って「おお、皐月」と言う。ちゃんと、帰ってきてくれた。目立った傷も無くて良かった。



「馬超さん!! お疲れ様でした!! ご無事で何よりです!!」



私が言うと、馬超さんは「ありがとう」と言う。そして、懐から何かを取り出した。それは、私が馬超さんにお守り代わりとして渡した札。



「これがあったおかげで、とても心強かった。本当に感謝する」



格好良く微笑みながら、お札を返してくれる馬超さん。私はお札を受け取りながら「どういたしまして」と言いながらニカッと笑う。その時、半兵衛さんが思い出したように「あ、そうだ」と呟いた。半兵衛さんに視線を向けると、半兵衛さんは私のことを見ていて、



「皐月殿とかぐやさんのこと、くのいち殿達に紹介しなきゃね」



と言った。頭を掻きつつ「えー、なんか恥ずかしいですね」と照れる私の言葉に、半兵衛さんが笑う。そんな中、「若ー」と馬超さんを呼ぶ馬岱さんの声が聞こえた。馬超さんにつられ、私と半兵衛さんも声のしたほうを見る。そこには、私達三人を除いたかぐや達の姿もあって、みんな私達の元に歩み寄ってくる。



「この娘は?」



私を見て首かしげ、私の事を馬超さんや半兵衛さんに聞く馬岱さん。



「え、と……ここから何百年後の世界から来た夏野皐月です」
「「「…………」」」



慌てて私が自己紹介をすると、馬岱さん達が黙ってしまった。すると、真っ先に我に返った馬岱さんが「若、この娘頭打ったの?」と馬超さんに聞く。失礼な!!馬岱さんの言葉にムスッとすると、苦笑した馬超さんが私の肩に手を置く。



「信じられんかもしれんが、皐月は本当に未来人だ。服装からして納得できるだろう?」
「んー…、まあ、確かに」



私は上から下までジロジロ見る馬岱さん。まさかOROCHI2世界に来るとは思っていなかった私は、夏目世界で着ていた普段着のまま。Tシャツにスカート、というお洒落のおの字もない格好。……日頃からお洒落に気を配っておけば良かった……。



「この世は何でもありだから、未来から来てもおかしくないッスよね〜」



頭の後ろで腕を組みながら呑気に言うくのいち。まあ、確かにこの世は何でもありだよなあ。そう納得した瞬間、視線を感じた。違和感な視線に眉間に皺を寄せながらそちらを見ると…――



「ッ!!?」



――妖が居た。体中に目玉が浮き出ている、気味の悪い妖だ。
思わず口に手をあてて俯いてしまう。どうしよう……、あの妖、私が妖を見ることができると知ってしまっただろうか。このままではマズイ。もしかしたらあの妖、襲いかかってくるかもしれない。そのせいで、周りに被害が出ることも……。



「……あの、私、少し外の様子を見てきます」



一番近くにいる半兵衛さんに声をかける。半兵衛さんは私の言葉を聞いて「え、何言ってんの!! 危ないじゃん!!」と驚いた表情で言う。でも、このままでは皆に被害が及ぶかもしれない。私は「平気です、ちょっとだけですから」と無理矢理会話を終了させ、本陣の外へ小走りで出た。




 ***




皐月が出て行った後、皐月と半兵衛の会話を聞いていた司馬昭が「……どうしたんだ? アイツ」と呟いた。と、次の瞬間、かぐや達の横を突風が駆け抜けた。



――ビュウッ
「うおっ!!? な、何だ!!?」
「ただの風みたいだが……」



いきなりの風に驚く司馬昭に、冷静に考えるホウ徳。本当はただの風ではなく、妖。司馬昭が言葉を告げた瞬間、先程皐月を見ていた妖が皐月を追いかける為に通ったのだ。だが、妖を見る事ができない司馬昭達は、ただの風、と思いこんでしまっている。そんな中、妖の存在に気付く者がいた。



「今のは、まさか……」



仙人であるかぐやには、妖が見える。それはOROCHI世界でも夏目世界でも同じ。皐月の身を按じたかぐやは、すぐに皐月を追いかける。



(あれ? かぐちんは? by.くのいち)
(え、そこに……、ってあれ? by.馬岱)



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