10 討伐軍として軍をたてた半兵衛さん達は、馬超さんの仲間を救う為に過去へ戻った。勿論、かぐやと私もだ。 ――バンッバンッ 「〜〜っくぅー!! やっぱ慣れんわー!!」 二丁拳銃を両手に持ち、迫りくる敵を次々と撃って行く。だが、殺してはいない。足や腕を狙って戦えなくしているだけだ。この銃は今朝、寝床の横にあったもの。誰に聞いても「自分のではない」と言うので、勝手に私が使っている。でもまあ、有り難かった。戦に出るのなら、私も戦わなければならなのだから。 「かぐや!! 無事ー!!?」 「はい。皐月も怪我が無くて何よりです」 ひとまず周りの敵を倒した私とかぐやはお互いの身体の心配する。良かった。かぐやに傷はひとつも無い。というか、可愛い顔して結構やるんだなあ、かぐや。一応周りの敵を倒したのか、半兵衛さん、馬超さん、司馬昭さんが私達の元に来た。 「馬超殿は早く行って仲間を助けなよ」 「だがっ……!!」 「だーいじょうぶだって!! 此処は、俺達に任せろよ」 微笑んで馬超を安心させようとする半兵衛さんと司馬昭さん。馬超さんがかぐやへ視線を移す。かぐやはニコッと微笑んで頷く。すると、今度は私に視線を移した馬超さん。なんだか凄く不安な目をしている。 「私なら大丈夫です、馬超さん。半兵衛さん達がもついてますし」 「……そう、だな」 そう言いつつも、まだ不満がありそうだ。「馬超さんにしては珍しい」と思いつつ、私は腰につけているポーチから人型の札(小)を取り出す。私の行動に周りの四人は首を傾げている。「これ、渡しておきます」と言いながら馬超さんに差し出すと、「札?」と首を傾げながらも受け取ってくれる。 「御守り代わりとして持っていてください。あ、でも、それ私の大切な物なので、絶対に無くさないでくださいね?」 「大切な物……? それなら、受け取るわけには……!!」 「いいんですいいんです!!」 受け取った人型の札を私に返そうとする馬超さん。だが、私はそれを拒んだ。 「さっきも言った通り、それは御守り代わりです。だから、絶対無事で帰ってきてください」 私が悪戯っ子っぽく、ニカッと笑う。すると、馬超さんは唖然とする。でも、それは一瞬ですぐに「フッ」と格好よく微笑んだ。「ああ、約束だ」と、馬超さんはそれだけ言って、馬に乗る。私達の顔を見ると、「必ず、戻ってくる」とそう言い、馬を走らせて行ってしまった。少しでも、勇気づけることができただろうか。小さくなっていく馬超さんと馬の背中を見て思っていると、かぐやが控えめに私に声をかける。 「皐月、良かったのですか? あの札は……」 「良いの。私がそうしたかったんだから」 「でも……、」 「大丈夫。この世界ではまだ見ていないし」 私とかぐやの会話を聞いていた半兵衛さんと司馬昭さんは首を傾げている。あ、話しておけば良かっただろうか。そんな事を考えていた時だった。突然、司馬昭さんの足元にクナイがささった。 「なっ……!!」 急な事に頭はついていかず、ただ周りを見渡すしかできない。と、目の前に可愛らしい女の子が降りてきた。「清盛様の為……」、そう言って武器を構えるのは、私と同じくらいの歳で髪を高い位置で結っている女の子。――くのいちだ。 「げっ、忍だ……。厄介な娘が出てきたなあ」 面倒くさそうに言う半兵衛さん。まあ、確かに忍が相手だと面倒くさい。半兵衛さんの言葉に頷くと、司馬昭さんが素早く動いた。司馬昭さんの行動に吃驚して、司馬昭さんの行動を見守ることにした。すると、司馬昭さんがくのいちの両手首を掴んで押し倒した。 「ちょ、」 「えええええ」 「……?」 司馬昭さんの行動に半兵衛さんと私は唖然、あっちの事を知らないかぐやは首を傾げている。虚ろな目でありながらも、司馬昭さんから離れようとするくのいち。だが、司馬昭さんがそれを許そうとしない。 「し、司馬昭さん!! 健全なかぐやが居る目の前で何をしようとしてるんですか!!」 「全くだよ。ヤりたいなら自分の妻でヤれば良いのに」 「半兵衛さんも変な発言やめてください!!」 「んなこと言ったって、他に止められる方法無いだろ?」 「と、とりあえず気絶です!! 気絶!!」 「あー、はいよ」 司馬昭さんは私の言葉に返事をすると、くのいちの腹に一発決めて気絶させた。少し手荒だけれど、押し倒している状態だったら仕方ない。 「どうやら、何者かの術によって操られていたようですね……」 「そう考えると、放っておけないよね」 「目覚ましたら術解けてっかな?」 「ええ、恐らく解けているはずです」 かぐやの言葉に司馬昭さんが「よし!!」と声をあげる。すると、くのいちを俵のように担いだ。半兵衛さんが「どうしたの?」と聞くと、「仲間にする」と言った。その提案に、半兵衛さんは「良い案だね」と頷く。「異論はあるか?」と私とかぐやに視線を向ける司馬昭さん。当然私は異論が無い為、首を横に振る。かぐやも「いいえ」と答えた。すると、司馬昭さんがニカッと笑う。 「よし、じゃあ本陣にこの娘置いてこようか」 司馬昭さんが歩き出す。それに続いて、私達も本陣に向かって歩き出した。馬超さん、大丈夫かな……。 [*前] | [次#] [表紙へ戻る] |