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塔子さんに買ってもらったワンピースを着て、鏡の前で「よし」と言う。
今日は、貴志、ニャンコ先生、ヒノエ、三篠と一緒に東京に行く日。新選組の皆と、再会する為だ。貴志の学校は、今日はテストで午前中のみらしく、午後は暇なんだそうだ。それならば早いほうが良い、ということで午後、貴志達と一緒に行くことになった。
荷物を持って、皆が待っている玄関先へ向かうと、既に私以外揃っていた。



「やっぱりその姿で行くんだね」
「「ああ、勿論」」



黒猫姿のヒノエと、人間姿の三篠。電車や新幹線って猫大丈夫かな?、と疑問に思いつつも、黒猫姿のヒノエを抱き上げる。三篠は新選組の頃とは違い、この時代の服を着ている。それさえも似合っているのだから、かっこいい人は得だなあ、としみじみ思う。
「行こうか」と言う貴志に、「うん」と返事をして歩き出す。貴志は何回か東京に行ったことがあるらしく、「任せとけ」と言われた。東京に着くまでは貴志に任せるとして……、問題はそこからだ。




 ***




東京に着いた。
私達が居た地域とは違い、東京は人や建物がたくさんあって、……正直怖い。思わず貴志に引っ付くと、貴志は苦笑しながら「大丈夫だよ」と言ってくれた。貴志は、龍とはまた違う優しさに溢れた人だ。ついつい甘えてしまう。



「だけど、こんなに人が多いんじゃ探すのは難しそうだな。とりあえず、その人達が居た場所に行ってみるか」



貴志の言葉に、三篠は「そうだな」と頷くと「こっちだ」と歩き始めた。
ヒノエ曰く、三篠は遠出をよくするらしいから、何回か東京にも来ているのだろう。降ろしていた黒猫姿のヒノエを再び抱き上げ、人の波に流されないように、三篠の後を追った。




 ***




着いたのは、大きな建物がある場所だった。



「此処だ」
「……学校?」



三篠の言葉に、貴志は首を傾げて言う。
門に埋め込まれている表札らしきものを見ると、私立薄桜学園、と書かれていた。随分長いけれど、姓なのだろうか。それとも、建物の名前? 敷地内からは、たくさんの声が聞こえてくる。



「この学校の生徒はテスト期間じゃないのか」



ちょこちょこと歩きながら言うニャンコ先生は、そのまま敷地内へと入っていく。貴志が「おい! ニャンコ先生!」と呼び止めるが、ニャンコ先生はそのまま進んで行く。その後ろ姿はなんとも愛らしいものだが、勝手に入ってしまっていいのか分からず、心配で貴志を見る。私の視線に気づいた貴志は、私に視線を向けると苦笑した。



「見つかったら事情を話そう。それで駄目なら、逃げるしかないな」



逃げる……。なんだか、いけないことをしているみたいだ。
だけど、貴志が言うのなら、そうするしかないのだろう。「うん、分かった」と頷く。敷地内へと入る貴志に続き、黒猫姿のヒノエを抱き抱えたままの私も、三篠と一緒に同じように入る。一歩入っただけでも、まるで泥棒になったかのような心境だ。



「誰も外に居ないけど、まだ授業中なのかな?」
「好都合だな」



貴志とニャンコ先生の会話を聞きながら、辺りを見渡す。この時代は、見たことがないものばかりだ。本当に同じ国の100年後なのか、と思ってしまう。
あまりに見すぎてゆっくり歩いていたのか、三篠に「どうした?」と声をかけられる。三篠達と差がついていることに気づき、慌てて三篠達に駆け寄った。


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