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「伊織は江戸時代から来たんだよな? どういう感じなんだ?」
「えっと、結構争い事が多かったかな。あまりのんびりしてる暇がないし。あ、新選組っていう組織に居候させてもらってたの」
「へえ、新選組かあ。……新選組ぃぃい!?」



夕飯も食べ終わり、貴志の部屋で貴志と一緒にのんびり話していると、貴志が急に叫んだ。貴志がこんなに大声を出すところを見るのは初めてで驚いてしまう。塔子さんや滋さんにも聞こえたのか「貴志君、どうしたのー?」「鼠でも出たかー?」と心配して遠くから声をかけてくれた。貴志は慌てて「なんでもないです、すみません!」と声を大きくしながら部屋の中から二人に返事をする。



「伊織、新選組っていったら、近藤勇とか土方歳三とか!」
「えっ、土方さん達のこと知ってるの!?」



慌てた様子で近藤さんと土方さんの名前を言う貴志。もしかして、貴志は新選組のことを知っているのだろうか。そんな事を考えていると、今まで寝ていたはずのニャンコ先生が私の隣へと歩み寄ってきた。「新選組か、聞いたことのある名だな」と言った後、「ほあ〜」と伸びをしながらあくびをするニャンコ先生。思わず笑みを浮かべて和む。ニャンコ先生の言葉を聞いた貴志が「妖の間でも有名だったのか?」とニャンコ先生に聞いた。



「ああ、思い出した。昔、ヒノエと三篠が新選組に居候していたのだった」



え? 今、何て言ったの……?



「ニャンコ先生! ヒノエと三篠のこと知ってるの!?」



思わず身を乗り出して聞いてしまった。だって、ヒノエと三篠って私が知ってるあの二人以外に考えられない。もしかして、貴志とニャンコ先生はヒノエと三篠と何か交流があるの……?
「あの二人は、手助けをしてくれる奴らだからな」と言うニャンコ先生に、心底ホッとする。ヒノエと三篠はまだ生きてるんだ。しかも、妖が見える人間に協力してくれている。……良かった。本当に、良かった。私は思わず、ホッと安心し、笑みを浮かべる。その時「そういうお前は、何故二人を知っている?」とニャンコ先生が聞いてきた。



「私が新選組に居候してた時の友人なの」
「ヒノエと三篠が!?」
「うん」



ヒノエと三篠と一緒に居た時の事を思い出し、思わず微笑む。そんな私を見て、貴志も優しく微笑んでくれた。そんな時、「会ってみるか?」というニャンコ先生の声が聞こえた。「え?」とニャンコ先生の言葉を聞き返す。



「あやつ等とは、九時に此処で会うことになっている」



しれっと言うニャンコ先生に、貴志は知らなかったのか「初耳だぞ!」と文句を言っている。だが、「プイッ」と可愛らしく口で言い、貴志から顔を逸らすニャンコ先生。そんなニャンコ先生の頭を撫で、私は「一緒に居ても良いの?」と聞いた。意外にも「今更な質問だな」と返ってきて、確かに、と思いつつも「ありがとう」とお礼を言う。撫でる手を離すと、ニャンコ先生は私の膝に乗って座る。少し重いけれど、ヒノエと三篠に会わせてくれるのだから、これくらいは我慢しなければならない。



「早く、会いたいな」



そう言うと、貴志が私に微笑みかけてくれた。もうすぐ。もうすぐだ。早く会って、また、楽しい話をしたい。


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