其の十三



忍術学園に着き、門のところにいた男性に言われて入門票とやらに名前を書いた。
以前来たときは中に入らずに帰ったが、忍術学園の中は想像してた以上に広かった。
旦那様は忍術学園に何度も来ているようで、すたすた歩く旦那様についていく。
と、その時、



「おやまあ」
「ん? あれ?」



知っている人物が穴を掘っているのを目撃した。
えっとー…、名前は確かー……。
「田村?」と聞くと、口を尖らせて「綾部です」と言われてしまった。
おおっと、綾部だったか。



「あ、少し用事があるので旦那様行ってください」



旦那様を待たせるのは悪い、と思い、旦那様にそう言う。
旦那様は少し間があったものの「ああ」と言い、背中を向けて歩いて行った。
さて、と綾部に顔を向けると、綾部は体の土を払って私に近寄った。



「滝夜叉丸のところに案内しましょうか?」



その言葉を待ってた!
「是非」と返事をすると、綾部は「こっちです」と言って歩き出した。
綾部の後ろをついて行きながら、私は周りの風景に視線を向ける。
色とりどりの制服を着た忍術学園の生徒達は、皆自由に伸び伸びと自分がしたいことをやっている。
笑顔溢れる忍たま達を見て、今が戦国乱世だということを忘れそうだ。




 ***




「滝ーっ」



しばらくして、綾部がどこかに顔を向けながらそう言った。
綾部の視線を辿って見ると、そこには何故かヘトヘトに疲れている滝がいた。
滝は綾部に呼ばれ、私達に視線を向けると「え、すず姉!?」と驚きをあらわにした。



「久しぶりー」



滝に近寄りながらそう言うと、滝は混乱して「え!? え!?」と混乱する。
なんか会うたびに驚かれている気がする。
「用事あったから来ちゃった」と笑って言うが、唖然とするだけ。
反応されないと、それはそれで寂しいもんなんだな。



「なんで舳丸さんと一緒にいたんですか?」
「結婚したの」



綾部の言葉にそう返事をすると、綾部も滝も「え?」と言って首を傾げた。
もう一度「結婚したの」と同じことを言うが、二人の反応は変わらない。
……そういえば、なんで綾部は旦那様のことを知ってるんだ?
「旦那様のこと知ってるの?」と聞けば、二人は勢い良く縦に頷く。
へえ、知り合いだったんだ。



「あ、あの、じゃあ結婚相手というのは、」
「舳丸さん?」



二人の問いに、「うん」と頷く。
綾部の「なんという巡り合わせ」という呟きが聞こえ、心の中で「確かに」と思う。
その時、滝が「え、えええええええええっ!?」と叫んだ。
ちょ、うるさっ。
あまりのうるささに、私と綾部は思わず両手で両耳を塞ぐ。
滝にとってはそんなに驚くことだったのか、それとも綾部の表情が乏しいのか。



「だ、大丈夫なんですか!? 上手くやってるんですか!? 何日か後には離縁とかないですよね!?」
「母上もそうだけどさ、皆なんでそんなに不安がってんの?」



そんなに私の性格最悪か。
私の言葉に「だってすず姉我が儘じゃないですか」と滝が言いやがったので、とりあえず頬を抓っておく。
「いたたたたっ」と目に涙を浮かべて痛がっている滝を見ていると、自分の髪の毛に違和感を感じた。
髪の毛を引っ張られているような感じがして、滝の頬から手を離して後ろを見る。



「お前は確か……、浜?」
「斉藤タカ丸ですっ」
「すずさん毎回間違えますねぇ」

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