おかえりなさい | ナノ
言いたい事は明日言え - Think twice before you speak -

「おいひい、おいひふぎる」
「ちゃんと飲み込んでから喋りな?」



シチューを食べながら喋る紅葉に言うと、彼女はふにゃっと笑った。
まるで「てへ」と言いそうな表情だ。
確かにピアーズの作ったシチューは美味しいけど。

紅葉が帰ってくる間、少しだけスマホで義手のことを調べた。
値段と、具体的にどのような動きをするのか知りたかったからだ。
……ピアーズがつけたいかどうかは分からないが。



「Does it taste good?」



ピアーズに美味しいか聞かれ、慌てて「うん」と頷く。
い、いけない、考え込んでスプーン止まりかけてた。

義手の値段は、とあるメーカーのものは、正直思ったより安かった。
だけど、ピアーズに合った義手をオーダーメイドしてもらうとなると、もっと高くなるだろう。
それに、片腕全部が無くなっているとなると、動かすことも難しいはず。
ということは、ピアーズは義手を拒む可能性が高い。



「ま、本人次第だなー」



そう呟く。
紅葉が「何が?」と聞いたが、「なんでもない」と誤魔化した。
もう少し、ピアーズが生活に慣れてきたら、その時に話題に出してみよう。



 ***



「ねえ、どっちが良いと思う?」



明日は日曜日。
紅葉は前に言ったように、明日は彼氏とデートだ。
というわけで、着て行く服を選んでいる。ピアーズも一緒に。

今紅葉が床に並べたコーディネートは二種類。
袖がフリルになっている可愛い白シャツと、浅葱色のガウチョパンツ。
薄ら模様の入っている白シャツに、黒色のスキニーパンツ。
ようは、可愛い系と大人系のどちらかってことだ。



「紅葉ならどっちでも似合うけど、……んー、どっちだー?」



思わず唸る。

どちらも良い。どちらも好き。でも、どちらかじゃないと駄目。
というか、トップスが白なのは絶対なのね。
トップスが白色だと合わせやすいから、私もよく白にするけど。



「As your impression...」



今まで黙っていたピアーズが口を開いた。
顔を向けると、彼は迷うことなく、コーディネートに指をさす。



「It seems that this suits you.」



そう言いながら指さしたのは、薄ら模様の入っている白シャツ+黒色のスキニーパンツの方。
なるほど。こっちか。
確かに、足が細長い紅葉にとって、スキニーパンツは細長さを魅せることが出来る。
それに、紅葉の彼氏は流行に疎いらしいから、こっちのシンプル綺麗なほうが好きかも。



「私もピアーズに同意かな。相馬さんへの印象にも良さそうだし」



相馬さんとは、紅葉の彼氏さんの苗字だ。

ピアーズと私の意見を聞き、紅葉は「じゃあ、こっちにする!」と、選んだほうの服を掲げた。
そして「ありがとうございました!」と言い、服達をしまいに自室へと行ってしまった。
紅葉、自分の意見を言わなかったけど、紅葉も気持ち的には私達寄りだったのかな?

そんなことを考えていると、肩をトントンと叩かれた。
誰かは分かっている為、ピアーズに顔を向ける。



明日一緒に出かけませんか。



ズイッと見せられたスマホの画面には、そう文字が綴られていた。

あ、明日?
休みだから良いけども……。

急なお誘いに驚きつつも、ピアーズに視線を向けて頷く。
すると、彼は安心したように笑みを浮かべた。あ、好き。



「何するの?」



スマホに向かって言うと、ピアーズがスマホの画面を見た。
その文を見て、ピアーズもスマホに向かって言葉を発する。
再びスマホを見せられると、



外の景色を見に行きます。



と文があった。
ふむふむ。
「分かった」と頷けば、ピアーズも頷き、スマホを閉じた。

ピアーズにも、多少は道を覚えてもらわないといけないかもしれないしね。
ずっと家の中にこもりっきりじゃ息も詰まるだろうし。
……、っていうか私のスマホ勝手に使ってない!?

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