変魂if | ナノ

『01』


「よし、お前は今から地獄で働け」



なんて言われて、白目を剥きそうになったのは私のせいではないはず。いつものように寝て、いつもの朝を迎えると思ったら、ドラゴンボールの世界の閻魔大王様のデスクの上だったなんて信じられないが現実だ。経緯を話せば「地獄で働け」としれっと言われるし、正直すぐに帰りたい。



「お前が此処に居るのは何か意味があってのことだろう。安心しろ、念の為力は与えてやる」



力……? 不思議に思っていると、閻魔大王様が私に手をかざした。小さな光が閻魔大王様の手から私の体へと埋め込まれていく。戸惑っていると、そんな私を察したのか「大丈夫だ」と言われた。



「これで、お前の体を悪意ある攻撃から守ることが出来る」



……、一体どういうことだ……? 身を守るものなら大歓迎だけど、具体的な説明をしてほしい。しかし、閻魔大王様はその説明をせず、「これは管理員である証だ」と私に何かを差し出した。それを受け取って見てみると、それはバッジで”管理員”という文字が刻まれていた。これを付けろということなのだろう、と胸元らへんにバッジを付ける。



「いずれお前が帰れる日が来るまで、健闘を祈る」



閻魔大王様がそう言った瞬間、足場が急に無くなった。「うわっ!?」と言う声と共に私の体は暗い中に落下していく。や、ヤバイ、なんてことしてくれてんだ、あの人ォ! 心臓が浮くかのような感覚が気持ち悪く、いつか来るかもしれない衝撃に備え、目をぎゅっと力強く瞑った。




 ***




しばらく耐えていると、ふわっ、と自分の体が浮いた。驚いて目を開けると地面は目前で、ゆっくりと体が地面に落ちる。ちょっとした痛みはあったものの凄く痛い衝撃は無くてホッとする。はー、どうしたもんか。



「おい、」



後ろから声をかけられ、いきなりのことにビクッと肩を震わせてしまう。恥ずかしい。後ろを振り返ると、そこには二人の男性がいた。片方は頭ハゲの大柄な男性、片方は髪の毛が凄く長くて凄く鬱陶しそうな男性。……あれ? この二人どこかで……。



「娘、お前今上から来たな。新しい死者か?」
「あ、いえ、私は閻魔大王様から管理員になれと言われて」



「その証拠に」と、胸元につけたバッジを見せる。すると、彼等二人はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。……なんか嫌な予感。そう思った瞬間、二人が私に向かって手をかざした。二人の手には光が集まっていき、それが集まっていくのと同時に、自分の背筋が寒くなるのを感じる。それだけじゃなくて足の震えと、思考回路の停止。



「俺達に見つかったのが運の尽きだな」



ハゲの男がそう言う。何が運の尽きだよ、こちとら伊作の不運だけで手一杯だってのに。心の中でそう思えても、口に出してはいえない。恐怖で息がしづらくなっていると、二人が一斉に「ハッ!」と言い、手の光を私に向かって投げつけた。



「ッ!」



衝撃に備え、手を軽くクロスしながら目をぎゅっと瞑る。……しかし、いくら経っても衝撃が来ることはなかった。どういうことだ?、と目を開けて彼等を見るけれど、彼等は目を丸くし驚いた表情のまま固まっていた。……今、何が起こったの?



「ば、馬鹿なッ!」



髪の毛が鬱陶しそうな男がそう言い、こちらに走ってきた。えっ、と思ったのも束の間、男の拳が私の頬めがけて飛んでくる。今度は目を閉じる隙もなかった為、完全に殴り殺されるのを覚悟した。……しかし、



バチッ



男の攻撃は私に当たることは無かった。私の肌に当たる前に、後5cmというところで男の攻撃が跳ね返されたのだ。……もしかして、閻魔大王様がくれた力って今のやつのこと? 自分の掌を見るけれど、これといって変わりはないし実感が湧かない。けど、今見た力は本物のようだ。



「お、女、貴様何者だッ!?」
「何者って言われても……」



攻撃してきた男に言われるが、閻魔大王様がくれた力以外は普通の一般人だ。いや、異世界人というのは異様か。私自身も困惑していると、それが伝わったのか「気味の悪い女だ。なあ、ナッパ?」と攻撃してきた男が後ろの男に言う。……あれ、今ナッパって言った……?



「そんな女放っておけ、ラディッツ」



お、おおおお!? 今ラディッツって言った!? ってことは、この二人ってあのナッパとラディッツ……!? 唖然としていると、二人は私に背を向けて歩き出す。え、ちょちょちょ。慌てて二人に駆け寄り、二人の腕を掴んで歩みを止めさせる私。二人は鬱陶しそうに私を見ると、代表してナッパが「なんだ?」と聞いてきた。そんな二人を見上げて、私は一言。



「――来たばっかだから地獄案内してくんない?」



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