変魂if | ナノ

『雪ではしゃぐのは子供だけ』


「第一回チキチキかぶき町雪まつり開催決定ぃぃぃぃ!」



そう大声で言うお登勢さんを見て、「おお本物だ」と小さく呟く。だが、寒すぎてすぐに「はっくしゅんっ!」とくしゃみを出す。桂さんに冬用の羽織、手袋、マフラー、耳あてを買ってもらって身につけているけれど、それでもまだ寒い。ふう、と一息つくと、口から白い息が出てくる。



「冬紀、サボってないで手伝わないか!」



後ろからポカッと軽く殴られ、思わず「いてっ」と声に出す。後ろを振り向くと、案の定桂さんがいた。……私やんなくてももう充分出来てきてるのに……。



「ほら、仕上げに取り掛かるぞ」



そう言うと、桂さんは皆の元に戻って行く。桂さん越しに私達桂一派が作っている石像を見て、思わず溜め息をついた。エリザベスを元にした雪の滑り台に、これは石像なのかどうなのか疑問に思う。それに、今此処でしっかり作ったとしても、後で銀さん達に壊されているのを知っているから手伝う気が失せる。



「ん? 桂さんどこ行ったんですか?」
「ああ、なんか偵察行ってくるってどっか行っちまった」



皆の元に戻ると、先に戻っていたはずの桂さんの姿がどこにもないことに気づいた。近くにいる仲間に聞いてみると、「どっか行った」という返事が返ってきて、思わず遠い目になってしまう。私に「サボるな」と言った人がどっか行っちゃうだなんて。思わず「あんの人は……」と溜め息をついてしまう。



「うおおおおお!」
「スゴイ! アミューズメント化してる!」



ん? 突然背後から聞こえてきた声に、手を擦りながらも振り向く。そこには、主要人物である銀さん、神楽、新八、それから桂さんが並んで立っていた。初めて見る万事屋三人の姿に感動し、「ふおおおおお」と小声で呟く。だが、その後の展開を思い出し、危機感からこの場から少し離れる。



「おいおい、ちゃんと手伝えよー」
「いや、ちょっと休憩です」
「お前ろくにやってねぇだろうが」



離れると、桂一派の仲間がいちゃもんをつけてきたけど、軽くあしらう。近くにいれるのは嬉しいけれど、流石に被害は受けたくないのだ。ボーッとエリザベス像を見ていると、神楽がエリザベス像に近づいていっていることに気づいた。神楽は滑り台の下の方からチェーンスパイクを付けた靴で上に向かってザクザクと歩き始める。



「リーダー遊び方違う」



桂さんの冷静なツッコミに動じず、次は登りきった状態で「ロッククライミング的な」と言いつつ、ズギャギャー、とそのまま下に降りる。桂さんが「違う。すべり台だぞ、それは」とまたもや冷静にツッコミをするが、すぐに「それですべるなァァ!」と荒ぶる。



「あ、あの、桂さんの仲間の方ですよね? なんだかすみません」



あーあ、と思いながらその光景を見ていると、新八が私に話しかけてきた。てっきりモブ扱いされて声はかけてもらえない、と思っていた為、新八だけでも話しかけてきてくれてとても嬉しい。



「いや、全然。ぶっちゃけ攘夷志士が何やってんだって感じだし」



私の言葉に納得したのか、新八が「あー、確かに……」と苦笑して言う。新八からエリザベス像に視線を向けると、桂さんが調度自ら滑り台を壊すところだった。「あ」と声に出すと、新八が「え?」と言いながらエリザベス像に視線を向ける。そして、新八の目が眼鏡の逆光で見えなくなる。



「これじゃ優勝無理だな」
「あの、なんか、……本当すみません」
「いいっていいって」



心底申し訳なさそうに言う新八に、私は苦笑する。



「私、神田冬紀。”冬さん”か”冬ちゃん”って呼んで」
「あ、僕志村新八っていいます。新八って呼んでください」



新八が言い終わった調度その時、「おーい、新八ー、行くぞー」と言う銀さんの声が聞こえた。その声に反応し、新八は「はいっ」と返事をすると慌てて銀さんと神楽の元に走り去って行く。そんな新八を見届け、壊れてしまったエリザベス像をどうするか話し合っている桂さんや仲間達を見て、溜め息をついた。その後、何故か大乱闘が始まってしまった為、一人で帰った。



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