変魂if | ナノ

『夢主トリップ』


「はあ……」と溜め息をつき、橋の手前で座り込んで膝を抱える。
見知った風景から、急に知らない風景へと変わり、私は帰り道を探すべく歩き回った。けれど、帰り道は一向に見つからず。此処がどこなのかすらも分からないまま、私は足の痛みに疲れた。



「どこだよ、此処……」



半べそ状態になりながらも、地面に向かってそう呟く。今まで伊作率いる保健委員達と一緒に薬草摘みをしていたのに、死んでもないのにまたトリップだなんて……。死んだらトリップって流れじゃないのかよォ……。
諦め状態になっていると、足元に何やら黄色いペンギンの足のような物が見えた。なんかエリザベスに似てるなあ、と思いつつ、俯かせていた顔を上げる。と、そこには……、



『坊主、大丈夫か?』



エェリィザァベスゥゥゥウウウウ!?
思わず発狂しそうになったがなんとか堪え、私は目の前にいる白いペンギンを見つめる。それは明らかに私が愛読している銀魂に登場するエリザベスそのもの。プラカードを見ると、いまだに「坊主、大丈夫か?」と書かれている。



「え、あ……」



ど、どどどどうしよう。まさかエリザベスが目の前にいるだなんて。……って、此処ってまさか銀魂の世界? 私ってば銀魂の世界にトリップしたの? 嬉しい反面、複雑な気持ちもある。確かにずっと銀魂の世界には来たかったけれど、今では忍たまの世界に大切な存在が出来た。それに、最初に出会った人物が何故エリザベスなんだ何故銀さんじゃないんだ何故なんだ。



『もしかして家がないのか?』



エリザベスがプラカードをひっくり返した瞬間、そう書かれた文字が出てきた。その仕組みがどうなっているのか聞きたいけれど、今はそれどころじゃない。私はエリザベスのプラカードからエリザベスの目へと視線を変え、頷く。



『坊主、ついて来い』



再びプラカードをひっくり返してそう言うエリザベス。内心「えっ」と私が思っていると、エリザベスは私に背を向けて歩き出した。私は慌てて立ち上がり、エリザベスを追いかける。




 ***




「そうか、新入りか! 少々頼り無さそうだが、俺とエリザベスが教えてやろう!」



「はっはっはっはっ」と嬉しそうに笑っている奴を見て、私は「マジかよ……」といよいよ目が死んでいく。目の前にいるこの長髪男は、桂小太郎で間違いないだろう。綾部と同じ声だということが証拠だ。エリザベスに着いて行き、桂一派が隠れ家としている家なのか宿なのかは分からないが、そういう感じの部屋に来た。……ら、エリザベスが私を指さして「新入り」と言いやがった。で、今に至る。



「知っているだろうが、俺は桂小太郎だ」
「あ、神田冬紀です。”冬さん”もしくは”冬ちゃん”と呼んでください」



私の言葉に、桂、いや桂さんは、「まるで銀時みたいな奴だな」と呟いた。だが、仲間が増えたことが嬉しいのか、桂さんはすぐに話題を変えて「さあ! 今夜はパーティーだ!」と満面の笑みを浮かべて拳を作った。今更新入りじゃないなんて言えないし、ここは桂一派として頑張るか……。



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