第八話「どう見てもおかしい」


――わあ〜っ! 懐かしいなあ!



身支度をして外に出歩くと、タカ丸が満面の笑みを浮かべた。キャッキャッ、とはしゃぐ姿は無邪気な幼子の様。それを見ながら、私はいまだに眠さを堪える。寝るな寝るな。こんな所で寝たら潮江さんに怒られるぞ。「タカ丸ー、あんま離れちゃ駄目だからねー」と釘をさしておくと「はーいっ」と呑気な返事が返ってきた。本当に分かってるのかねえ、あの子は。



「タカ丸の様子はどうだ?」
「滅茶苦茶はしゃいでますね」
「そうか」



私の言葉に、潮江さんはフッと笑みを浮かべる。その笑みは、目の下に隈が出来ているというのに綺麗で。彼も、やっぱり美形なのか、と思った。そういえば、潮江さんの歳はいくつなんだろう。20代後半か30代前半くらいかな? 立花さんは……、10代後半?



「鈴村、学園のことをお前に話しておかねばならん」
「良いんですか? 私怪しいんですよね?」
「昨日の馬鹿さ加減を見たら、お前に害がないことが分かった」
「……さいですか」



立花さん、それ悪口じゃないですかね。だいぶ傷つきましたよ、私。まあ、ずっと疑われたままっていうのも嫌だけどさ。不貞腐れていると、「忍術学園の生徒は、一年生から六年生までいる」と立花さんの説明が始まった。ああ、小学校みたいな感じに考えればいいのかな? てか、忍者育成版小学校?



「六年生は深緑色の制服、歳は15」
「はっ!?」



立花さんの言葉に、私は唖然としながら立花さんを見る。立花さんの着ている忍び装束は深緑色。次に、潮江さんへを顔を移す。潮江さんの着ている忍び装束も、深緑色。と、いうことは……、



「お、お二方、15歳、ですか……?」
「ああ」
「そうだが」



ありえん! その容姿と雰囲気で15歳!? 二つも年下!? 嘘でしょう!?



「さ、詐欺ってる……」
「何を訳の分からんことを言っているんだ?」
「話を続けるぞ」



む、むむむ室町時代と平成時代とで、容姿と雰囲気がこんなにも違うものなのか!? 平成時代めっちゃ幼いじゃん! 私こんな童顔で17歳ですけど何か!?



「五年生は群青色で、14歳」
「ッファ!?」



久々知さんは群青色の忍び装束を着ていた。ということは、久々知さんは14歳ということでありまして、3歳も年下なわけでありまして……、これまた有り得ないだろうがッ!
そうこうしている間にも説明が続いて行く。四年生は紫色で13歳、三年生は萌黄色で12歳、二年生は青色で11歳、一年生は井桁模様の水色で10歳。最年少が10歳か。平成時代の小学校とはズレが出てるんだなあ。此処の人達が大人びすぎていて現実逃避したい。…………え、ちょっと待って。



「タカ丸って紫色の忍び装束着てますよね。ってことは、13歳……?」



アレが? アレが13歳?



「いや、タカ丸は15歳だ。途中編入でな、最上級生の六年生に入れるわけにもいかんから四年生になったんだ」
「なる、ほど……?」



いかん、頭が混乱してきた。この隣にいる立花さんも潮江さんも年下で、タカ丸も年下、久々知さんも年下。でも何故か私より大人びている。……いよいよ本当に現実逃避したくなってきたわ。若干白目を剥きそうになっていると、「失礼だが、鈴村の歳はいくつだ?」と聞かれ、私は固まった。次第に、顔がスケ○トダンスのボッ○ンがやるキョドり顔になっていく。



「じゅ、17ッス、うッス」



恥ずかしくて、そんな感じに言う。すると、次は立花さんと潮江さんが固まる番だった。二人は私の顔を見ながら、「信じられない」という顔をあらわにしている。おいおい、傷つくって。



「う、嘘をつくなッ! お前が17なわけないだろう!?」
「い、いや、本当に!」
「その姿のどこが17だ! せいぜい13が良いとこだろうが!」
「そんなこと言ったら二人だって詐欺だっつの!」
――わー、喧嘩する程仲が良いってやつだねえ。
「お前が15歳っていうのも詐欺だ!」
――え〜っ!?


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