第16話


もしも学校の七不思議が関係していたら。そう思うとゾッとする。しかし、七不思議をなんとかしなければ、きっと不穏な空気に包まれたまま。ならば、私達が行動を起こさなければ。



「数馬、白い紙と筆ってどこにある?」
「えっとー…、はい、コレです」
「ありがとう」



数馬から白い紙と、墨のついた筆を受け取る。私は胡座をかいた状態で、筆を持って白い紙に書き始める。まずは「テケテケ」と書く。そしてもう1つ、「骸骨標本が動く」。二つの共通点は”学校の七不思議”。ならば、これから起こるであろう七不思議を想定すれば良い。まずは、私が思いつくかぎりの七不思議を書こう。



「そういえば、さっきお父さんとお母さんから連絡があってな。二人は教職員、一年生や二年生達、くのいち達と一緒に学園長先生の元に居るらしい」
「あの、勘ちゃんや三郎は……?」
「左門と三之助、藤内もどこに……?」



予算会議に参加していたのは、各委員会の年齢が高い二人。一年生と二年生は学園長先生の元にいて無事だ。それに、保健委員もこの場にいる為無事。しかし、予算会議に参加していない学級委員長委員会に所属する鉢屋三郎と尾浜勘右衛門。そして、三年生である神崎左門、次屋三之助、浦風藤内。この五名が、いまだ安否が分かっていなかった。



「この場にも学園長の元にも居ないということは、今も何処かでうろついているだろう」
「そんな!! 早く探しに行かないと……!!」
「まあ、待て。今、私の相棒が何かに気づいたようだぞ」
「え? 小雪さんが?」
「少し時間が必要のようだがな」



太公望殿の言葉に、誰もが私へと目を向ける。私はその視線を気にしないようにしながら、七不思議を書いていく。つってもね!! こんだけ視線が集まってたら気になりますよ!! 恥ずかしいし、動きがぎこちなくなるし!! 太公望殿はそれを面白そうに見てるけど!!



「1、2、3、4、5、6、7……。これで全部、かな?」
「これ、なんですか?」



紙と筆を挟んで目の前にいる数馬が、首を傾げながら聞いてきた。
「テケテケ、骸骨標本が動く、トイレの花子さん(トイレから女の子のすすり泣く声)、鏡に自分が映らない、廊下での足音に振り返ると足だけが歩いている、校庭から無数の手が出る、肖像画の目が動く」
とりあえず、思いつくだけ書いてみた。最後の「肖像画の目が動く」はバッハやモーツァルトだけど、学園のどこかに学園長先生の肖像画があったはずだ。



「これは、”学校の七不思議”を思いつく限りまとめたもの」



そう言い、紙を皆に見えるように持つ。私の言葉に、七松が「”学校の七不思議”? 初めて聞くぞ」と首を傾げる。私はそれを「大まかに言っちゃえば、学校にまつわる7つの怪談話」と説明をした。



「私達が会った”テケテケ”と、お兄ちゃん達が会った”骸骨標本”。この2つに共通するのが”学校の七不思議”なんだけど……」
「……ああ、なるほど。これから起こることを想定してみたわけか」
「そういうこと!」



お兄ちゃんが「お前頭良いなー」と言った。「でしょ!」とドヤ顔をするが、実際は頭が悪いのが事実。こういう時にはよく頭が働く。私が書いた七不思議のメモを見て、太公望殿が「では、役割分担をしよう」と言う。



「それは、小雪と柊のチームで分けて七不思議を解決する、ということか?」



酒呑童子の言葉に、太公望殿が「ああ、そうだ」と頷く。どうやら下級生、保健委員である善法寺には残ってもらうらしい。まあ下級生達だけっていうのは心配だしね。納得していると、「もし何かあったらコレを使え」と、太公望殿が懐から何かを取り出した。それは、ペットボトルくらいの大きさの瓶に入った水だった。ただの水、というわけでは無さそうだ。



「これは清水。ありとあらゆる邪を浄化する水だ」



清水を手にとって、まじまじと見る善法寺。見た目はただの水だから、そんな力があるとは思えない。でも、太公望殿が持ってる程の清水だ。結構効き目のある清水だろう。「さて、まずは四年生から分けるとしよう」と言う太公望殿の言葉に、私はすかさず、



「我が弟の綾ちゃん、三木!! カモン!!」



と言う。綾ちゃんは素直に「やった。小雪と一緒」と言うものの、三木はツンデレなのか「小雪さんの御指名とあらば、行くしかありませんね!」と照れながら言った。ということは、滝とタカ丸はお兄ちゃんのチームとなる。そして、次は五年生。



「あの、小雪さん、御一緒しても良いですか……!?」
「え、申し出てきてくれるとは思わんかった。大歓迎よ!」
「有難う御座います!!」



顔を赤くしながら言ってくれる竹谷に笑顔で了承する。竹谷は余程嬉しかったのか、頭が取れそうな勢いで頭を下げた。首大丈夫かな。次に六年生。六年生はお兄ちゃんと仲が良いようで、中在家と小平太がお兄ちゃんのチームを所望した。



「小雪さん、借りを返したいので良いですか?」
「借りってお前……。まあ、良いけど」
「人数的に私と留三郎も、小雪さんのチームだな」
「ああ、そうだな」



これでチーム分け完了だ。私のチームは綾ちゃん、三木、竹谷、潮江、立花、食満。お兄ちゃんのチームは滝、タカ丸、久々知、不破、中在家、七松。潮江と食満が喧嘩しないか心配だけど、立花が止めてくれるだろう。なんだか安定しているチームで安心した。



「んじゃあ、トイレの花子さんは私のチームがやるよ」
「ああ、同性の方が良いしな」
「鏡と廊下の足もやるよ。簡単そうだし」
「じゃあ、俺のチームは残りの校庭の手と肖像画だな」
「……そうと決まれば、行こう」



酒呑童子が立ち上がる。それに続いて、私達七不思議を解決するメンバーも立ち上がった。あ、そうだ。私は慌てて「お兄ちゃん!!」とお兄ちゃんを呼び止める。



「アレやろう!! ○ォーゼの友情の証!!」
「そうだな! 友情の代わりに、お互いの無事を祈って!」



ニッ、と笑う私とお兄ちゃん。ガシッ!、と握手をする。次に、斜めに握手をして、拳をグーにしてコツンと合わせる。そして、手の甲を横にくるようにして、私は上から、お兄ちゃんは下からコツンと拳を合わせる。最後に、その反対をやるように、私は下から、お兄ちゃんは上からコツンと拳を合わせた。



「じゃ、また後で」
「後でな」

 
17/68
しおりを挟む
戻るTOP



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -