第15話


保健室へと向かう道のりで、初めて会った人達には自己紹介をしてもらった。さすがにこの人数はキツいのだが、忍たまを知っている私にとっては簡単に覚えられた。というか、元から知っている。自己紹介の際、何故か竹谷は顔を赤くして緊張していた。きっと女との対面があまり無いせいだろう。周りの皆の目線が暖かかったのは気になるけど。



「えっと、その、傷、痛くないですか……?」
「あー、痛いけど、そうも言ってられないんだよねえ……」
「へ?どうしてですか……?」
「ほら、皆を守るのが私の役目だからさ」
「…………」



私の言葉に、竹谷は何故か黙ってしまった。その表情は眉間に皺が寄っていて、なんだか険しい。え、なんか地雷踏んじゃったかな。マズイこと言った……?



「小雪さん、自分が女だってこと分かってます?」
「え? まあ、女だけど……」
「なら、無理はしないでください!! いざというときは俺が守りますから!!」



そう言う竹谷の言葉に、私は思わず固まってしまった。だが、それは私だけではないらしい。言った本人である竹谷も、周りの皆も固まってしまっている。すると、一番最初に我に返った竹谷が、顔を真っ赤にして弁解してきた。



「え、えっと、今のは、その……!! ”無理はしないでほしい”って意味で……!!」



「年下のくせに生意気言ってすみません……」とか細く言う竹谷。その表情は、いまだなお赤く染まっている。私は驚きながらも「あ、いや……」と返事をする。さすがは忍たま五年生。私が14歳の頃なんて厨二病に走ってたのに。誰かの為に命をかけて動けることは良いことだ。時代が違うと、こうも考え方も違うのか。



「それじゃ、お言葉に甘えようかな」



そう言い、フッと微笑む。すると、竹谷がキョトンとした表情で「え……?」と言った。「ねっ」と言うと、竹谷は顔を真っ赤にしながら「っはい!! 守らせていただきます!!」と元気良く返事をした。うんうん、良い子だ。



「じゃ、さっさと保健室行っちゃおうか。そろそろ血が固まってきた」
「え!? た、大変じゃないですか!!」



再び足を動かす私達。後ろで竹谷が他の五年生達に「良かったじゃないか!」「これで一歩進展したな」と言われていたのを、私は知らない。




 ***




皆でぞろぞろと医務室に入る。医務室にはお兄ちゃんと、善法寺と数馬以外の保健委員、それから滝が居た。お兄ちゃんの傍らには、何故かバラバラになった骸骨標本。私達が来たことに、お兄ちゃんが「おー、ぞろぞろと」と少し驚く。



「小雪さん、御無事で何よりです! ……って、その腕の傷なんですか!!?」
「あ、滝。色々あってね」
「お、おおおおま、早く手当て……!!」
「分かってるって、お兄ちゃん」



善法寺に手当てを頼もうと思ったが、善法寺はバラバラになった骸骨標本を見て、「コーちゃんがバラバラに!!? 一体誰がこんなことを……!!」と泣きついている。……今のアイツには頼めないな。「小雪さん、傷の手当ては僕がやります」と言う数馬の言葉に甘え、数馬に案内をされ、救急箱が置いてある場所に座る。目の前には数馬が座り、器用に私の腕に消毒液をかけてくれる。他の皆はそれぞれ話をしているようだ。



「ぬ、おッ……!! いだだ……!!」
「だ、大丈夫ですか……!?」
「おおっふ、大丈夫大丈夫……!」



でも痛いものは痛い。腕がジンジンと熱い気がするのは気のせいではないだろう。手当てをしている最中、釣竿型宝貝が光った。そして、私の隣に移動して、人間姿の太公望殿が姿を現す。「無様だな」と鼻で笑われ、ムスッとしながら「うるせ」と返す。



「ええええ!!? つ、釣竿が人間になった!!?」
「あ、そのこと含め色々と太公望殿に話してもらうから」
「私に全て任せる気か?」
「うん。今手当て中だし」



私がそう言うと、太公望殿は溜息をついてお兄ちゃん達の元へ向かった。この場が静かになれば、私と数馬にも話は聞こえるだろう。



「私は太公望。仙界に住んでいたが、今は訳あって小雪の武器になっている」



ほら、聞こえる。数馬は太公望殿の話に耳を傾けながらも、私の腕に包帯を巻いていく。保健委員を三年やっていることもあって、手慣れている。



「小雪が怪我をしたのは、テケテケという亡霊が現れたから。勿論、退治はした」
「テケテケ、とはなんだ……?」



太公望殿の言葉に、酒呑童子が首を傾げながら聞いた。すかさず、お兄ちゃんが説明する。お兄ちゃんが知っているテケテケっていうのは、たしか、事故にあった女生徒が運悪く上半身と下半身に切断されて、すぐに死ねずにもがき苦しんで死んでった霊、のこと。お兄ちゃんの言葉に、誰もが顔を歪める。誰だってもがき苦しみながら死ぬだなんて、そんな死に方したくないはずだ。



「で、俺のところは、伊作のコーちゃんが動いて襲いかかってきやがった。まあ、返り討ちにしたけど」
「柊さんの仕業だったんですか!? 酷いです!!」
「一番最初に攻撃したのはたまたま通りかかった滝夜叉丸だけどな」
「僕のコーちゃんがぁぁぁああ!!!」



包帯を巻き終えた数馬が「これで大丈夫です」と言った。私は「ありがとう」とお礼を言う。「また怪我をしたらすぐに言ってくださいね」と微笑みながら言う数馬に癒されつつ、「うん、その時はよろしく」と返事をする。何故こうも可愛い子達が多いのだろうか、この学園は。……あれ、そういえば……。「テケテケ」と「骸骨標本」って、舞台がどちらも学校だったような。この学園も「忍者の学校」。……となると、これは学校の七不思議が関係する、とか? ……そんなまさか。

 
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