06
その日の夜、私は嫌な夢を見た。
――名前を教えてくれませんか? 私は、吉田松陽といいます。 ――今日から新たな仲間に加わった坂田銀時君と坂田真白さんです。皆さん、仲良くしてあげてくださいね。 ――クスクス、どうやら晋助は真白のことが心配のようですね。 ――小太郎が兄になりたいと言ってきた? おやおや、銀時が怒らなければ良いのですが……。 ――貴女の笑顔は、太陽のようですね。とても癒されます。 ――仲間を、みんなを、護ってあげてくださいね。
閉じていた目を開けると、歪んだ天井が視界に入る。目が熱い。泣いていたのか。……嫌な夢、見ちまったな……。そう呟く。声は、寝起きのせいなのか、泣いたせいなのか、かすれている。濡れている目をゴシゴシと腕で拭き「あー……」と声を出す。夢を見たのは、昼間に過去の事を話したのが原因だろうか。
「…………」
汗のせいで、髪の毛が濡れて額にくっついてしまっている。鬱陶しく思い、上半身を起こして前髪をかき上げる。手に汗がベットリつく。気持ち悪ぃな。松陽先生が行ってしまった時の事、帰ってきた松陽先生が首だけだった事。あの時の嫌な光景が頭に残って取れやしない。前を見て歩こうと決めたはずなのに。
「――…真白、起きてるのかい?」
外から雑渡の声が聞こえた。私が起きた気配を感じて来たのだろうか。
「……寝てる」
呟くように、そう言ってやった。雑渡は「ふーん」とそれだけ返事をする。お前ツッコめよ。そこは新八みたいに、「寝てる奴が”寝てる”なんて言うわけないだろォォオ!!!」ってツッコむところだろうが。
「息が乱れてるみたいだけど、やらしい事でもやってた?」 「やるわけねぇだろ。悪夢見た、それだけだ」 「悪夢、ねぇ……。一緒に寝てあげようか?」 「誰がお前なんざと。気持ちだけ貰っといてやるよ」 「えー、昆奈門パパ悲しい。いつから真白はそんな不良娘になっちゃったの?」 「誰がパパで誰が娘だァァア!! 気持ち悪いこと言うんじゃねぇよ!!!」
障子越しの会話だというのに、思わず雑渡に向けて枕を投げてしまった。当然、枕は障子を傷つけて畳の上に落ちる。少しイラッとして、雑渡にも聞こえるように大きく舌打ちをする。
「危ないな〜」 「当たれば良かったものを」 「でも、元気出たんじゃない?」 「……知るか。じゃ、私は寝るから」 「はいはい、おやすみ」
雑渡の言葉を聞き、私は布団に入る。障子の方へ目を向けると、縁側に座っている雑渡の影が見えた。その姿を見た瞬間、何故か安心してしまい、そのまま寝ることができた。
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