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「……っはあ、はあっ……」



無我夢中で走り続け、無我夢中で人を斬り殺してきた。後ろに倒れている屍の数は数えきれない程。目の前には敵の兵士達、後ろには敵の兵士の屍達。



「白羅刹、覚悟ォッ!!」
「うおぉぉおお!!!」
「仲間の仇ぃぃぃぃいいい!!!!」



女一人を相手に、何十人もの男がよってたかって攻撃してきやがる。その事実に、私は鼻で笑い、刀を構える。私がか弱くねぇのは自覚してる。けどよ、お前等もなかなか精進しねぇなァ……?



「ぎァ……!!」
「ひぎっ……」
「ぐぁあッ……!!」



最初に斬りかかってきた三人を、いとも簡単に刀で斬り殺す。「さあ、次はどいつだ?」と、いまだ残っている敵の兵士達を見ると、敵の兵士達は青ざめた表情で怯えていた。



「ば、化物だ……!!」
「に、逃げろぉーっ!!」



一人が逃げ出したことにより、続いて他の敵の兵士達も散らばって逃げて行く。それを見て、私は溜め息をついた。そして、着物についた返り血を見て「うわあ」と顔を歪める。白かった着物は、ほとんど血の色で染まっていた。それは「化物」と言われてもおかしくは無いほどの量だ。……こんな姿を新八や神楽に見られたら、なんて言われるか……。あの二人に拒絶されることに恐れを抱いていると、隣に誰かが降り立った。そちらへ顔を向けると、そこには雑渡の姿。



「派手に暴れたね」
「まあな。戦の度に着物が汚れちまっていけねぇや」
「たまには殿の護衛にまわったら?」
「そうだな、今度そうしよ」



刀を鞘に納め、空に向かって「んー」と伸びをする。辺りを見渡すと、敵の兵士は全くと言っていいほどいなかった。これはもう、タソガレドキの勝利確定だろう。後は雑渡達に任せて、私は本陣に戻るとするか。



「全く、こんなに殺すなんて。真白を倒せる人物は世界にいないな」
「そんな事ねぇさ。世の中広いからな、私を倒せる奴等なんて何人もいる」
「例えば?」



雑渡の言葉に、私は顎に手を当てて考える。瞬時に頭に浮かぶのは、兄さん、ヅラ、坂本、高杉、といった攘夷戦争に共に参加していた四人の姿。だが、この四人は雑渡に言ったって分からないはずだ。私ははぐらかすように雑渡に背を向ける。



「――私を倒せるのは、アイツ等しかいねぇだろ」




 ***




今日は六年生のみで戦場の偵察だ。どうやらタソガレドキと名も知らぬ軍が戦っているらしい。戦況を見れば、タソガレドキが押していることが一目瞭然だ。その戦の中に、タソガレドキ武将の坂田真白の姿もあった。



「……なんだ、あの強さ……」
「俺達は、あんな奴を相手にしようとしてたのか……?」



凄まじい殺気に迫力のある戦いぶり。坂田真白を前に、勝てる者など誰一人としていないではないか。気づけば、坂田真白の後ろには死んだ敵の兵士達が数多倒れている。あんな数の兵士を倒す人物など、今まで見た事も聞いた事も無い。敵に回したら、私達などあっさり殺されてしまうだろう。



「あんなに実力のある者が、何故噂にならない……?」



ふと疑問に思ったことを、口に出してしまった。すると、隣に居る小平太が「確かに!!」と言った。もしかしたら、私達が知らないだけで、あの人は相当有名になっているのだろうか。……しかし、それなら先生方も我々生徒に注意するように言うはずだ。考えれば考えるほど分からない。



「そういえば最近、タソガレドキに”白羅刹”って強者が居るらしいが……」
「っ!! まさか、坂田真白がその”白羅刹”なのか!!?」



文次郎と私の会話に、長次や小平太達が驚いて目を丸くする。確かに驚いてしまうことだ。だが、こうでも考えなければ糸が繋がらない。



「確かに、白羅刹の特徴である”全身真っ白”に当てはまるよね……」
「私、ずっと白羅刹は男だとばかり思ってた!」
「俺もだ。だが、あんなに強いんなら素直に頷けるよな」



留三郎の言葉に「そうだな」と同意する。あの女、ずっとただの武将だと思っていたが、どうやら違うらしいな。私はあの女を侮っていた。あんなに凄い人物が、忍術学園に来ていただなんて。敵にまわっていたかと思うと、ゾッとする。



 
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