01


誰か助けて。
そう叫びたい。でも、恐怖心から声が出ない。私は、友人達と遊んだ。その後、普通に歩いて帰っていたはずだ。なのに何故、――…今いるのが森の中で、知らない男達に刃物を突きつかれているのだろう。



「嬢ちゃんよォ、その身ぐるみ全部脱いじゃくれねぇか?」



首元にある刀の先。この男達三人組の姿は妙だ。まるで、戦国時代などにいた”山賊”のよう。今の行動だって、山賊っぽい。なんで。どうして。森の中なんて歩いていなかった。周りに家が建っている道を歩いていた。……気づいたら森の中にいるだなんて、有り得ない。



「返事しろよ? ああ?」



怖い。誰か助けて。涙が出そうになるのを必死に堪える。一人の男に腕を強引に掴まれる。私は咄嗟に「やだ!! 放して!!」と抵抗した。けれど、ビクともしない。私がなにか悪いことをしただろうか。……思い返せば、結構出てくる気がする。いや、そんなこと今はどうでもいい。誰か。誰かいないの? 私を助けてくれる救世主は現れないの?



「その子から離れろ」



頭上から聞こえた声。と、思ったら、何かが上から降ってきた。いや、降りてきたのだ。私はビクビクしながらも、その何かへと目を向ける。そこには、一人の若い男性がいた。この人は三人組の男達と違い、それほど汚くはない着物を来ていた。急な展開についていけない。



「なんだ、テメェは」
「貴様ら相手に名乗る名なんてない」
「なんだと!? 生意気な!!」
「やっちまおうぜェ!!」
「おうよ!!」



三人同時に男性へと攻撃をしかける男達。しかし、男性は涼しげな表情で立っていた。そして、



ドゴッ!
ゴッ!
ガッ!



――…男性は、いとも簡単に三人組の男達を倒してしまった。



「大丈夫かい?」



私の目の前に来て、私の目線に合わせる男性。それに加え、私を安心させようとしているのか微笑んでくれた。この人、どこかで見た気がする。この顔にこの声……、絶対見覚えがある。……でも、思い出せない。



「……あり、がとう……ございました……」



人見知りな為、相手の顔を見て話すことができない。恥ずかしくて若干俯きながら言ってしまった。うわ、私これ絶対第一印象悪いわ。



「どういたしまして。君は……、南蛮から来たのかな? 着物じゃないものを着てるし」



男性の言葉に私は唖然とする。南蛮……、着物……。やっぱりおかしい。今の時代、この服装は普通で、さっきの山賊や男性の服装の方が違和感なのに。どうしよう、私、変なところに入り込んじゃったのかも……。



「あ、あのっ……! 此処はどこですか……!? 私、気づいたら森にいて……!!」



思わず男性の着物を掴んで聞く。男性は私の言動に驚き、「お、落ち着いて」と言うけれど、私は落ち着けれない。今は何時代か、平成じゃないのか。そう問い詰めると、「へいせい?」と首を傾げられてしまった。



「今は、室町時代。各々の大名達が戦をして領土を争う時代だ」



室町時代……。ってことは、戦国時代ということだ。それじゃあ、私は戦国時代に来てしまった、ということ……。「そんな……」と力なく座り込んでしまう。どうしよう。大変なことになってしまった。私は慌てて持っていたバッグの中から携帯を取り出す。しかし、携帯は圏外になっていた。



「君は、やっぱり南蛮から……?」
「いいえ……。きっと、未来から……」
「未来……!!?」



そっと男性の顔を見ると、男性はやっぱり驚いた表情をしていた。そりゃそうだ。驚かないはずがない。困惑していると、男性が「とりあえず、君の名前は?」と聞いてきた。私は大人しく自分の名前を言う。すると、男性は「私の名は土井半助」と名前を言ってくれた。土井、半助……。どこかで聞いたことのある名前だ。……あああああ!! 忍たま乱太郎の土井先生か!!!



「未来から来たということは、住むところが無いんだよね?」
「あ、はい……」
「なら、私の家に住むと良い」



そう言って再び微笑む、土井、先生……。……え、ちょっと待って。土井先生って忍術学園の先生でしょ? つまりは忍者でしょ? 忍者ってもっと人を疑うものじゃないの?



「わ、私のこと、信じてくれるんですか……?」
「もちろん。その着物は、この時代にはないものだからね」
「あ、そっか……」
「それに…、――…君の目を見て嘘をついていないと思った」



土井先生の言葉に、私は唖然とした。そんなことを言われたのは初めてだ。それに、さすが忍者、と思った。土井先生が首を傾げながら「どうする?」と聞いてきた。私は、状況を詳しく分からないまま言う。



「よろしく、お願いします……」




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