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――…土井先生ときり丸が忍術学園に行ってしまって、一週間が経った。
ご近所さん方は仲良くしてくれるが、正直さびしくて不安で怖い。一人になってしまった私を心配して来てくれるご近所さんが多いが、夜になれば当然一人になるわけで……。幽霊とかそういう類が苦手な私は毎晩ドキドキしながら寝る。……でも…――、



「もう、無理ィィイイイ!!!!」



二人のいない生活に、私は思いっきり大声をあげた。泣きたい。泣いてしまいたい。というか、泣いても良いですか。このままじゃノイローゼになりそうだ。仕方ない、会いに行こう。土井先生に怒られようが、きり丸にうざがられようが、私は二人に会いに行くぞォォオ!!!! ……ああ、私はなんて悲しい奴……。



 ***




土井先生から受け取った忍術学園への地図を頼りに、、ついに忍術学園に着いた。当然、その前に弥生さんに「しばらくバイトに出れない」ということを伝えた。今、忍術学園の門が開いている。こっそり中を覗いてみると、授業をしているのか誰もいなかった。え、どうしよう。勝手に入っちゃってもいいのかな。



「――…あれれ? お客さんですかー?」



ひょこっ、とどこからか現れた男の人。この人は多分小松田さんだろう。「中に入るときは、入門票にサインお願いします」と言われ、差し出される入門票と筆。受け取ろうとした手を止めて入門票をジッと見る。今気づいたが、私はこの時代の文字を読むことも書くこともできない。いや、かろうじて少し読むことはできる。



「あのー?」



しばらく止まっていると、顔をのぞき込まれ、ハッとする。思わず「あ、いや、えっと……」と言葉に詰まってしまった。なんて言ったらいいか分からずにいると、どこからか鐘の鳴る音が聞こえた。長屋の方を見て、「あ、授業終わった」とそう呟く小松田さん。あ、そっか。忍術学園はチャイムの代わりに鐘を鳴らすのか。



「あ、あの、私は天道秋奈という者ですが……」
「へ……? あ、小松田秀作ですー!」
「あ、どうも……。あの、土井先生いませんか?」



私の言葉に、小松田さんがきょとんとして「土井先生……?」と可愛らしく首を傾げる。その仕草に癒されていると、急に誰かに押し倒された。



「ッ!!?」



背中の痛みに苦痛を感じる。自然と眉間に皺が寄るのに気づきつつ、私は自分を押し倒した相手の顔を見る。小松田さんが「秋奈ちゃん!?」と焦っているのが目の隅から見える。



「――…何者だ、貴様」



綺麗な顔立ち、涼しげな目、風にたなびく紫がかった髪。この人、私の記憶が正しければ、――…立花仙蔵。




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