親友が絡まれてます。 | ナノ

mission.02


日曜日
いつもなら「遊びに行こう」と誘いに来る來海は、今日は弟の綱吉と一緒に買い物をするらしい。親は40代ながらもラブラブすぎるので、二人だけで出かけてしまった。本当は「志奈も一緒に」と誘われたのだが、あのラブラブな空気についていけるはずもなく、その誘いを断った。家の中で一人、というのはさすがに暇なので、私もブラブラと出かけることにした。……のは良いのだが、



「君、なかなか可愛いねぇ」
「俺達と一緒にどっか行かない?」



いわゆるナンパというやつに関わってしまったようだ。人生初のナンパに足と手が少し震えてしまう。「いや、あの、私は、」とどうにかして逃げる為お断りしようと思ったのだが、奴等は「ははっ、緊張してるー!」「大丈夫大丈夫、俺達が優しくしてあげっからさ」と勘違いをしている。相手は男三人組。一人なら逃げれると思うけれど、三人いては追いつかれてしまう。相手を殴るにしても、私はあまり力が無い。ただでさえ、この道は人があまり通らないし。通ったとしても私達が仲良く話してると思っているのか、目を向けることもないし、気にもとめていない。



「さ、行こっ」
「恐がんなくて良いぜー」
「俺達、優しいし!」



男の一人に、ガシッ、と手首を掴まれる。逃げようとする前に捕まってしまい、とうとう逃げることができなくなってしまった。「や、やめてくださいッ……!!」と涙目になりながらも、手を振りほどこうと頑張る。けれど、ビクともしない。こんなところで男女の力の差を見せつけられるなんて。



「――…通行の邪魔だぁ。退け、カス共」



地をはるような低く恐ろしい男の声。その声は、三人組の男のものではなかった。目の前にいる三人組の男は、私の後ろを見て顔を青ざめさせている。そして、「ひぃっ!!」と悲鳴をあげながら走って行ってしまった。何があったのだろう、と私は恐る恐る後ろを見る。



「チッ、腰抜け共がよぉ」



その言葉を発した男の人は、確かにそこにいた。西洋系の整った顔立ち。腰まである長い銀髪。身を包むのは黒い服。とめどなく溢れる威圧感。綺麗な人、それが印象だった。お礼を言おうと思って、声をかけようとするが、



「っ……」



お礼より先に、涙が溢れ出てきてしまった。私が泣いたせいで、男の人は先程の威圧感とは裏腹に「っああ!!?」と焦った表情をあらわにする。そして、わたわたと焦りながらも「おま、何泣いてんだぁ!!?」と言う。ナンパされたとき、凄く恐かった。誰も助けてくれなくて。自分でなんとかするしかなくて。でも、この人が助けてくれた。



「っ……、すみません……」



服の袖でゴシゴシと涙を拭く。そして、助けてくれた人の顔を見る。やっぱり、綺麗な人。男の人が「厄介なことになっちまった……」と額に手を当てながら呟くのをよそに、私は立ち上がり、男の人の目をしっかりと見る。



「助けてくれて、ありがとうございました」



バッ、と頭を下げる。「……ああ」と言う返事を聞き、頭を上げる。このままお別れというのも気が引ける為、「あの、何かお礼をしたいので……、そこのコーヒーいかがですか?」と、すぐそこにあるカフェ店を指さす。男の人は、何かを考えた後「仕方ねぇ」と了承してくれた。




 ***




「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」と言う言葉と共に、男の人が頼んだコーヒーひとつと、私が頼んだミルクティーひとつが運ばれてきた。「すみません、これくらいしかお礼できなくて」と言うと、男の人はその言葉には返事をせずに「この店にはよく来るのかぁ?」と聞いてきた。私は慌てて「いえ、時々です」と答える。男の人はまたもや私の言葉に何も言わず、コーヒーを一口飲んだ。……不思議な人だなあ。



「あ、今更ですけど、私、鬼月志奈っていいます。あなたは……?」
「S・スクアーロだぁ」



すぺるび、すくあーろ……。スクアーロさん、か。どこの国の人なんだろう。日本語が上手。「私、外人さんと話すことは無いので、なんだか新鮮です」と、そう笑いながらミルクティーを飲む。ふと、スクアーロさんがジッと私を見ていることに気づいた。



「……お前、変わった奴だなぁ」
「え? そ、そうですか?」



初めて言われた。初対面の人に言われるなんて思わなかった。私そんなに言動おかしかったかなあ、と思い「これからはちゃんと女の子らしくしよう」と心に決める。とりあえず会話を広げようと、「スクアーロさんは、どうして日本に?」と聞く。すると、「仕事でな」と帰ってきた。出張ということか。



「じゃあ、結構外国行ったりするんですか?」
「ああ、時々」
「へえ!」



良いなあ、外国。私もどこか行ってみたい。例えば、アメリカとか。でも、外国は治安が悪いって聞くし、ちょっと怖いな。……あ、そうだ。



「あ、あの、メアドとか携帯の番号とか、交換しませんか……?」



控えめにそう聞くと、スクアーロさんは私をチラッと見てすぐにコーヒーへと視線を落とし、「ああ」と短く返事をしてくれた。私はその言葉に「やった」と笑みを浮かべ、ウキウキ気分で、バッグから携帯を取り出す。スクアーロさんも、自分の携帯を取り出した赤外線でメアドと携帯の番号を交換する。これで、また会うことが出来る。



「こ、今度、一緒にどこか行きませんかっ?」
「……時間があったらな」
「は、はいっ!!」



助けてくれたのは、銀髪が特徴の綺麗な男の人。私は生まれて初めて、一目惚れしてしまったのです。

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