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――ドイツ ブロッケン邸
家主の超人はトレーニングルームで汗をかいていた。トレーニングという名で呼ぶには少々行き過ぎな鍛え方、しかし当の本人はただがむしゃらにトレーニングを続け全く気付いていない
「ブロッケンJr.さん?」
トレーニングルームのドアが開くと恋人であるユウリの姿が見えた。ブロッケンはトレーニングの手をとめる
「あぁ、来てたのか」
「はい、先ほど…って言うか何やってるんですか!」
「何ってトレーニングだよ。見てわかんねぇの?」
「わかりますよ。でも明らかにオーバーワークです」
「先日先生に言われたこと忘れたんですか?」
「あぁ、覚えてるよ。人間の時に浴びたカピラリア光線がまだ体内に残ってるから安静にしてなきゃいけないんだろ」
ブロッケンはめんどくさそうに大きなタオルを肩にかけ汗を拭いた
「わかってるなら何故こんな無茶なトレーニングするんですか。身体を壊します」
「いいだろ。シャワー浴びてくる」
ブロッケンは恋人の台詞には答えずトレーニングルームを後にした
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シャワーを浴びリビングに戻ってきたブロッケン。ブロッケン邸のリビング、そこに大きく置かれた装置にブロッケンは眉間にシワを寄せた
「届いたのか」
「はい、先ほど設置させていただきました」
「ふぅん」
ブロッケンは興味なさそうに上半身裸でミネラルウォーターの蓋を開けた
「長年の闘いによるアイドル超人たちのダメージをリセットするためです。ブロッケンJr.さん」
ブロッケンはちらりとメディカルサスペンション装置を見るとまたミネラルウォーターを喉に流し込んだ
「ユウリはいいのかよ」
「えっ」
「俺がこんなカプセルに入ってよ」
ブロッケンはコトンとテーブルの上にミネラルウォーターを置くとユウリの目の前に立った
「…それは…委員会が決めたことです。それにブロッケンJr.さんのダメージを完治出来るなら入るべきだと思います」
「でもカプセルに入っちまったらこんなこともしばらく出来ないんだろ」
ブロッケンはユウリの頬に手をあてるとゆるゆると手を滑らせ細い腰を引き寄せる
「ブロッケンJr.さん…」
シャワーを浴びたばかりのブロッケンからは石鹸の香りがフワリとユウリの鼻腔をくすぐる。そりゃあ自分だってブロッケンと一緒にいたい。触れ合っていたい
でも
ユウリは抱き締めるブロッケンの胸板を押し、自身の身体を引き離した
「カプセルには入るべきです」
ユウリはキッパリと、そしてブロッケンの瞳をまっすぐ見つめる。揺らぐ決意のないユウリの言葉にブロッケンはため息をついた
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