The symphony of black wind
- 火の神殿(1/10) -


今、ミライはとてもワクワクしていた。その理由。それはここが遺跡だから、と言っておこう。



「有り得ない……有り得ないって言うか、奇特すぎだよミライ」



そんなミライにジーニアスの突っ込みが入ったのだった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







「ここが火の神殿かぁ」



朝一番でトリエットを出た一行は、砂漠の一番奥の奥にある旧トリエット跡へとやって来た。初めて訪れる場所に興奮気味なロイドが如何にも、と言った遺跡を見てそう言うと、クラトスも頷いた。



「レミエルの言葉を頼りに来るのなら、まずここ以外に考えられんからな」

「そっか、じゃあ早速……って、ミライ?」



意気揚々と行こうとしたロイドが皆を振り返った時、ふと視界に入った人物の様子がおかしい事に気が付いた。



「……あ、あつ……水をプリー……ズ」

「ちょ、ミライ大丈夫!?」



驚いて駆け寄るジーニアスにあまりの暑さにバテているミライはその小さな両肩をガッシリと掴んだ。



「ジ、ジーニアス……魔法で水を、出してくんない……?」

「え、でも僕の魔法は攻撃魔法だからそんな事したら、ミライ細切れになっちゃうよ!」



その言葉にコレットが驚愕した。



「そんな! ミライが細切れになっちゃったら魔物さん達に野菜炒めにされちゃうよ」

「いや、ならないしされないから」

「そもそも野菜は調達し忘れたからないがな」

「いや、だから……」



意外と天然入っているのか、クラトスのどうにもズレた発言にミライは気が遠くなりそうだった。

その時、



「魔物よ!!」



辺りを見渡していたリフィルが不意に声を上げた。慌てて戦闘体制に入ると、遺跡の朽ちた門のような所から数匹の魔物が現れた。



「ミライ、あんたは休んでろ! ここは俺達が何とかするから!」

「悪い……」



流石のミライも今回ばかりはロイドの言葉に甘える事にし、リフィルに肩を借りながら離れようとした。

しかし、



「む、しまった……!!」



クラトスの剣をすり抜け、一匹の魔物がミライ達に迫った。



「姉さん! ミライ!!」

「チッ……クソッ」



リフィルを自分の背に押しやり、腰のフォルダーに手をかけた時だった。



「氷の刃よ、降り注げ……───アイシクルレイン!!」

『!?』



辺り一帯に鋭く尖った氷の固まりが幾つも降ってきた。無差別に降ってきたそれにロイド達は驚くも、不思議な事に氷はロイド達を傷付けず、魔物だけを倒していった。



「ど、どうなってるの……?」

「確かに当たったよな、今」

「でもボク達は怪我してないよ? それに今の……」



マナの気配を感じなかった。

呆然と呟いたジーニアスにリフィルも頷き、考え込んだ。そんな中、クラトスは朽ちた柱に剣を向けた。



「何者だ」



その声に全員に再び緊張が走る。しかし柱の影から出てきた存在にロイド達は目を丸くするのだった。



「折角助けたのに、それはないです」

「え……?」



柱の影から出てきたのは、白金の髪をポニーテールにした小さな女の子だった。歳はジーニアスと同じくらいであろう少女は頬をプクッと膨らませると、突然術を放ってきた。



「タービュランス」



しかしその術はロイド達の身体を傷つける事なくすり抜けると、先程魔物を倒した後地面に突き刺さったままの氷を切り裂いた。


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