The symphony of black wind
- 火の神殿(2/10) -


そんな少女の行動に誰もが訝しげな視線を向ける中、ミライはハッとして辺りを見渡した。



「涼しい……!」



その言葉に全員が漸くこの辺り一帯の気温が下がっている事に気が付いた。



「君は、誰なんだ?」



少女にロイドが尋ねる。すると少女は不機嫌そうな顔から一転してニコッと可愛らしい笑顔を浮かべると名乗った。



「わたしはアリアと申します。精霊の研究の為にこの遺跡に来ている者ですわ」



そう言ってペコリと頭を下げるこの少女は年の割りに随分と礼儀正しいようだ。会話だけ聞いたら、ロイドとどっちが年上だかわからないだろう。そんな少女にロイド達も名乗り返した。



「俺はロイド、ロイド・アーヴィングだ」

「わたしはコレット・ブルーネルです!」

「ボクはジーニアス。あっちにいるのが姉さんのリフィルで、剣をもってる傭兵がクラトスさんだよ」



そう言って子供組も自己紹介をする。それにリフィルが「警戒心が無さすぎる」と嘆くのを横目にしながらも、ミライも名乗ろうとした時、アリアから近付いてきた。そして何故か彼を上からしたまでじーっと見てきたのだった。



「うーん……」

「ど、どうした?」



そんなに見られると流石に恥ずかしい。そう思う彼に気付く事無くアリアは暫くそうしていたが、突然「成る程」といって両手をポンと叩いた。

それにミライは首を傾げた。



「何?」

「いえ、ただ……やはりあなたもわたしと同じなんですね!」

「同じ?」



どういう意味だ、と更に首を傾げる彼にアリアは頷くと、とんでもない事を言い出した。



「だってあなたはわたし達と同じ、



















《異界の者》なのでしょう?」



その言葉に全身の血が凍る感じがした。



「異界の者? 何だそれ美味いのか?」

「食べ物ではないと思うわ」



ロイドの空気を読まないボケとリフィルのツッコミに我に返った。ミライはニコニコと笑い続けるアリアを睨む。



「君は一体何者なんだ?」

「わたしは探検家ですよ。最近精霊に興味を持ち始めたので、各地の遺跡を回ってるんです」



でも扉が開かなくて困ってるんですよ、と苦笑する様は先程の発言をあまり気にしていないようだった。しかしそれにしても怪しすぎる。探険家と言うが、"わたしと同じ"とはどう言う意味か。いや、そもそも何故ミライを一目見ただけで異界の者だと断言できたのかが問題だ。それをミライが質問をしようと口を開いた時、ロイドは彼を押し退け嬉しそうにアリアに言った。



「なあ、なら俺達もこの遺跡に用があるんだ。一緒に行ねーか?」

「まぁ、良いんですか!? あ、でも扉は開きませんよ?」

「それについては私に任せろ!!!」



意気揚々とした声に全員が驚いて声の主を向いた。そこには目をキラキラとさせて扉の周りを見つめるリフィルの姿があった。そんな彼女の姿に、不謹慎にもミライはアリアについての疑問は綺麗に吹き飛び……
















キタ――――――――――――!!!














と心の中で叫び、ガッツポーズを取ったのだった。


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