The symphony of black wind
- 闇のマナ使い(1/6) -



「ここ、かぁ……」



ミライはそう呟きながら目の前にある建物を見上げた。



「ねぇミライ、本当に一人で行くの?」



心配そうにジーニアスが言う。因みに彼は先程「ロイドに無理矢理連れて来られた」と言う事で無傷で解放された。そこにミライとノイシュが合流したのである。

ジーニアスの言葉にミライは頷いた。



「誰か他に助けを呼んだところで、ディザイアンの基地に来たがる奴なんていないさ」

「な、ならやっぱりボクも一緒に行くよ!」

「それはダーメ」

「どうしてだよ!?」



彼も親友であるロイドを助けたい。それはミライにも十分理解している事だ。だが、ここはディザイアンの基地。ジーニアスを無理に連れて行って万が一にも命を落としたとしたら、リフィルにどう顔向けをしたら良いのだ。



「ジーニアス、お前はノイシュと一緒にコレット達と合流しろ」

「はぁ!?」

「はぁ、じゃないって。……大丈夫だよ。直ぐに俺達も追い付くからさ」



なっ、と笑うとジーニアスの身を持ち上げ、有無言わさずにノイシュに乗せた。



「ちょ、ちょっとミライ……!!」

「よーし、ノイシュ! コレット達の所に向かってレッツゴーッ♪」

「ウォンッ」

「ちょ、オイ………ミライのバカァアアアアアアアアアアアッ!!」



嬉しそうに駆け出すノイシュの背にしがみ付ながら盛大な悪態を吐くジーニアスを手を振って見送る。やがて彼らが見えなくなると、ミライは再び建物を見上げた。



「よし、行くか!」



ミライは一度肩を大きく回すと、建物の中へと入っていった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







建物の中はこの世界にはあまり似付かわしくない、近代的な雰囲気に包まれていた。堅い鉄で出来た床や壁、無機質な機械、そして……敵の使ってくる武器。潜入して直ぐに出てきた敵なんかボタン一つで電気の矢が飛ぶボーガンのような物を使ってきたし、ビームサーベルのような物を使ってきた奴もいた。

ミライだってとうに二十歳を超えた年齢的には良い大人だが、まだまだ子ども心が抜けない所がある。しかも彼も男だ。こう言ったどこぞのSF映画宜しいセットがあれば当然………



「スッゲェエエエエエッ!! コレってアレだろ、レーザーガン! それにコレは空飛ぶ円盤的な!? ……お、ちょっとコレも貸して」

「ぐはっ」



ハイになる。因みに今の呻き声は襲撃して来たディザイアンの物である。ミライはディザイアンから強奪したビームサーベルを振り回しながら言った。



「なあなあ、お前らの中にアレいねーの? 黒い仮面に黒マントを着けたオッサンとかさー」



シュコーとか言うアレ、と興奮気味に話すミライにディザイアンはチンプンカンプンだった。



「い、意味がわからないのだが……」

「あぁ!? アレっつったらアレだろうよ。ダー●ベイダーだろうがァアアアアアッ!!」

「知るかァアアアアアアアアッ!!」



相手の胸倉を掴み上げ絶叫するミライにディザイアンも負けずに怒鳴る。正直、とてつもなく下らない言い争いだ。今、ここにまともな人間がいたらミライにこう言うだろう。






オメェ一体何しに来たんだ、と。



「だぁ〜〜〜〜もう、SW知らないとかお前それでも現代を生きる大人かァアアッ!!」

「だから知らねェもんは知らねェっつってんだろうがああああっ!!」



未だに不毛な言い争いを続ける二人。応援に来たディザイアン達もそんな二人に介入し辛そうに顔を見合わせていたのだった。


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