The symphony of black wind
- 闇のマナ使い(2/6) -


それからも暫くの間言い争いは続いていたが、あるところで突然それは終わった。



「……クッ、もういい。お前がSWを知らないのはよーくわかった」

「そ、そうか漸くわかっ」

「だから今すぐツ●ヤに行ってDVDを借りて来いや!!」



バキッと軽快な音と共にディザイアンの体は吹っ飛び、溝のような所に落ちていった。しかしミライは一つ重大な事を見落としていた。











この世界にDVDはおろか、SWなんて物は存在しない。だからいくらディザイアンにその面白さを伝えた所でわかる筈がないのだ。それをミライは知ってか知らずか、満足そうに息を吐くと両手を合わせて他のディザイアン達を振り返った。



「さーてと、…………次の相手は誰だい?」



ニヤリ、とそれは普段の彼からは想像が付かないくらい人の悪い笑みだった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







ロイドは困り果てていた。ディザイアンに捕まり、気が付いたら一人牢屋に閉じ込められており、先程漸くソーサラーリングを使って抜け出した。それから取り上げられていた武器を取り返し、脱出する為に建物の中を迷いながらも進んでいた……のだが。



「ミライ、………何してるんだ?」



そう呟いた先には恐らく自分を助けにこんな所まで来たのだろうミライがいた。しかしその様子は己の知る様子とはかなり異なっていたのだった。



「お、ロイド。無事だったんだな」



そう言って人好きな笑顔を向けて来る人物は間違いなく己の義兄なのだが、何かが変だ。その何かとは……彼の手にあるモノと、その彼の周りにある者達。



「なぁ、ミライ。ソレ、なんだ……?」

「ん? ああ、コレか。コレはディザイアンだよ、多分」

「多分!?」



つーか、何したんだよ! そう思わず突っ込む。ミライに胸倉を掴まれたまま鼻血を出してグッタリとしているディザイアンの一人は既に虫の息だった。他にも彼の周りにはタコ殴りにされたような傷を負った者や、火傷のような傷を負った者達が沢山倒れていた。
取り敢えず死人はいないようだが、敵ながら哀れだ。



「いやぁ、ロイドの居場所を聞こうと思ったんだけどよ。皆さんなかなかお口が固くてなぁ」



だからちょっと痛い目に遭ってもらいました、と語尾に♪マークでも付きそうなノリで宣うミライに呆れ半分、助けに来た喜び半分で複雑な気持ちになった。



「でもまぁ、お前の方から来てくれたんなら良いや。……悪かったな」



何故かそう敵に軽く謝り、パッと手を離す。そのまま地に伏したディザイアンからイヤな音が聞こえたような気がしたが、ロイドは敢えて見ないようにしながらも心の中で合掌した。



「と、とにかく、ここを脱出し……」

『侵入者だ、捕まえろ!!』



ロイドの声を遮るようにディザイアンの増援達の声が轟く。



「うげっ」

「タダじゃ返してくれそうもない、ってか。仕方ないな」



そう言ってフッと笑うとミライは指を鳴らした。



「ロイド、俺が道を作る。そしたら全力で走り抜けるぞ」



どうやって、と不安げな視線を寄越すロイドにミライは気にせず意識を高め、詠唱を始める。



「轟く浪鳴、黒き闇に呑まれろ───ブラッティハウリング!!」


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