A requiem to give to you
- 戦艦タルタロス(1/7) -


人生とは、いつ何時どのような事が起こるかわからない。



「大佐さん、近い内に鉛鎖でグルグル巻きにしてその辺に放置してやるわ」



これはつい数分前にタリスが帝国の大佐に放った言葉だが、後にまさかこれにほぼ近い状況に陥るなどとは、言った方も言われた方も全く予測など出来なかった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







タリス達は今、一隻の戦艦の中にいた。彼女がライガクイーンから預かった卵を手にルーク達の所へ戻った時、ルークとティアがマルクト軍に囲まれていた。驚くルーク達にイオンも予想外であったらしく、兵に指示を出したであろう人物に説得をしていた。しかしそれは受け入れてもらえず、碌な抵抗も許されないまま三人は目の前に聳える戦艦へと連行されたのだった。

三人は戦艦の一室に通された。牢ではなく兵士の休憩室のようだが、明らかに取り調べをするような椅子机の配置となっている。通された部屋の椅子に着かされ、それを確認すると机を挟んだ向こう側に彼女らをここまで連行した人物、ジェイドが座った。その後ろにはアニスと心配そうに三人を見つめるイオン、兵士が一人立っていた。



「さて、まずは突然手荒な真似をしてすみませんでした。ですが、こちらとしても貴方達を見過ごせない節がありましてね……少々お話を聞かせて頂きます」



そうジェイドが前置きをすると、控えていた兵士が一束の書類を渡す。それを受け取ると書類を数枚軽く流し読み、それから再び彼は口を開いた。



「レムデーカン・レム23の日、第七音素の超振動がキムラスカ・ランバルディア王国方面より発生、マルクト帝国領土タタル渓谷付近にて収束しました」



機械的に述べられた言葉に成る程、とタリスは納得がいった。



「超振動の発生源が貴方方なら、不正に国境を越えて侵入してきた事になりますね」

「ヘッ、イチイチ嫌味な奴だな」



ジェイドの言い方が勘に触ったらしいルークがそう悪態を吐くとアニスが面白そうに笑った。



「大佐ぁ、イヤミですってv」

「これは傷付きますね〜」



よよよ、とポケットからハンカチを取り出し目元を拭く。しかしその声と、何より愉快そうに上げられたらその口元からそれが嘘だと言うのがわかった。



「まぁ、それはさて置き。森での道中でティアが神託の盾騎士団である事は聞きました。それではルーク、そしてタリス。貴方達のフルネームを教えて下さい」



ルークとタリスは互いに顔を見合わせた。暫しどちらが名乗るか悩んでいたが、仕方なしに肩を竦めるとタリスから口を開いた。



「タリス・クレイア。こちらにおわすルーク"様"の使用人ですわ」

「ほう、それではやはりこちらの方は……」



やはり、と言う事はわかっていたのだろう。白々しくルークをチラリと見てくるジェイドに彼は舌打ちながら名乗った。



「そうだよ。俺はルーク・フォン・ファブレ。お前らマルクトが7年前に誘拐したファブレ公爵家のルーク"様"だ」

『!?』



それにジェイド、ティア、タリス以外の者が驚きの表情を露わにした。



「そうでしたか。貴方が……」

「……………」

「公爵家………素敵v」



約一名若干ズレた事を考えている者もいたが。そんな中ジェイドは訝しげに片眉を上げた。



「誘拐、とは穏やかではありませんね。こちらの記録にはない筈ですが……」

「俺だって詳しい事は知らねぇよ。気付いた時には全部終わってたんだからな」



それにジェイドは暫し考え込んでいたが、ふと時間を確認すると「恐らく、先帝政時代でしょう」と自己完結させると本題に戻った。


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