A requiem to give to you
- 戦艦タルタロス(2/7) -



「それで貴方達は何故マルクトまで? 観光目的、ではないようですが……」

「今回の件は私とルークの第七音素が超振動を引き起こった為に飛ばされてしまい、タリスもそれに巻き込まれてしまっただけです」



ジェイドの問いにはティアが答え、それに補足するようにタリスも言葉を紡ぐ。



「ですからマルクトへの攻撃とかのような敵対心ある行為でも何でもありません」

「ジェイド」



イオンが優しい表情でジェイドの名前を呼ぶ。



「お二人の言う通りだと思いますよ。彼らに敵意はありません」

「まぁ、温室育ちのようですからね。世界情勢にも疎いようですし」



と、ジェイドはルークを見ながら言う。



「け、馬鹿にしやがって」



拗ねた様子でそっぽを向くルークにイオンは苦笑し、もう一度ジェイドを呼んだ。



「ジェイド、寧ろここは彼らに協力を仰いでみてはどうですか?」

「……そうですね」



イオンの言葉に頷くと、ジェイドは途端に真面目な顔付きになりルークを向いた。それにタリスは非常に嫌な予感に駆られた。



(何か……不味くないかしら)



と、言うか部屋を出たいんだけど。そんな事を思うタリスを余所にジェイドはさくさくと話し始めたのだった。



「我々はマルクト帝国皇帝ピオニー九世陛下の勅命により、キムラスカ王国へと向かっています」

「もしかして、宣戦布告ですか?」

「宣戦布告って……戦争が始まるのか!?」



ルークとティアが驚きの声をあげる中、タリスはこの軍人が何を考えているのかがわかったらしく、苦虫を潰したような顔をした。



「ねぇ、ルーク。私……」

「逆ですよぅ、ルーク様♪ 戦争を止める為に私達が動いているんですよ!」

「アニス、不用意に喋ってはいけませんね〜」

「へへ、ごめんなさ〜い♪」

「………………っ」



アニスとジェイドのやり取りにタリスは遂に頭を抱えてしまった。それにティアが心配そうに訊いた。



「どうしたのタリス?」

「……これで動けなくなったわ」

「どういう事だ?」



ルークが怪訝そうに訊いてくる向こう側ではイオンは申し訳なさそうに眉を下げ、ジェイドとアニスはニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべている。



「……敵国の皇帝の勅命で、しかも導師を連れてキムラスカへ戦争を止める為に動くと言う事は国家機密にあたる事よ。それを王族でも軍人でもないたかが民間人が聞いてしまって良い事ではないわ」

「……えーと、つまり?」



彼女の言っている事を今一理解できていないルークは首を傾げた。



「つまり、彼女は暫くこちらで軟禁されてもらいます♪」

「はぁ!?」

「え!?」



タリスの代わりに答えたジェイドにルークとティアは目を見開いた。



「な、な………っ!!」

「大佐! いくら何でもそれは!」



あんまりだ、と言うそんなティアの訴えにジェイドは首を横に振る。



「申し訳ありませんがご本人の言う通り、一般市民が聞いて言い話ではありません」

「いや、それ寧ろあんたらが態と……」

「それに、」



と、ジェイドはルークの言葉を遮るとタリスが抱えている物を指で示した。



「それはライガの卵ですね。そんな物を持ち歩いている人を野放しには出来ないんですよ」










………………。











「って、お前は何持ってんだぁあああっ!!」



暫しの沈黙の後、ルークの怒声が飛んだ。それにタリスは意外そうにキョトンとしていた。


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