A requiem to give to you
- 闇ノ武者ノ棲ム城・後編(1/11) -


青い空と広大な緑色の大地。向かう先の更に彼方には空よりも深い碧い海。そしてその海と大地を境目にして目の前にあるは断崖絶壁………とまではいかないが物寂しげな丘がある。そこにはこれまた古そうな古城が一つ、ポツンと建っていた。

そんな古城の上空を一匹のフレスベルグが二人の人間を連れて飛んできた。



「オイ、アリエッタ。オレはいつまでこうしてりゃ良いンだよ」



いい加減頭がぼーっとして辛いんだけど、と言うグレイは今まさにフレスベルグに掴まれ逆さまに宙ぶらりん。いつの間にかライガの背から移動し、その巨鳥に跨がるアリエッタはうーんと口元に手を当てて少しだけ考える素振りを見せた後、



「もう終わり」



と、一言告げてフレスベルグに何かしらの指示を出す。それにグレイは酷く嫌な予感がし、慌ててアリエッタを見たがどうやら手遅れだったらしい。途端に己を掴んでいた爪の感覚がなくなると同時に、急激な落下による恐怖が襲って来たのだった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







光があまり届かない広く、静かで第一音素【シャドウ】の溢れる大広間。レジウィーダ一人その空間に立ち、目の前にある剣に触れようとしていた。あと数センチ……そう、あと数センチでその指先が禍々しい気に満ちた妖しげな剣に触れようとした、その時だった。






バサバサバザッ






ポイッ







ドカァアアアアアアアンッ






「マジふざけんなこのアマァァァァァァァァァアッ!!」




大型の鳥モンスターの羽音に混じり何かが捨てられた音と爆発音。次いで聞こえてきた覚えのある怒声にレジウィーダは伸ばしていた手を引き上を見た。



「あ」

「あ゙?」



目が合い、やはり見知った顔が真上から落ちてくるの認めると、レジウィーダは暢気に手を上げた。



「あれーアンタどしたのこんな所で奇ぐ……がはっ」



全てを言い切る前に落ちてきた人物に当たり、そのまま下敷きになった。しかも落ちてきたその人物はレジウィーダを潰す前にさり気なくドロップキックを噛ましていたのは誰も知らなかったりする。



「よう、久し振りだなァ? つか、テメェか……テメェだな。このオレ様をこんな目に合わした原因はよォ」

「ちょ、しまっとる……ギブギブ……っ」



落ちてくる早々いきなり関節技を決められ、締まる首に思わず床をバンバン叩く。しかし意外にもあっさりと拘束は解け、同時に上から舌打ちが聞こえてきた。



「ンッとに、お前やアリエッタと関わると禄な事がねーぜ」

「あたし何もしてないし!」

「ハッ、だとしても今日に限った事じゃねーだろ」



そう悪態を吐きながらすっかり穴が空いて空すら見える天井を見上げると、そこには彼をここに連れてきた張本人ことアリエッタが縫いぐるみを強く抱き締めながら頬を膨らませていた。



「アリエッタは悪くないもん。勝手に出ていって帰ってこないグレイが悪い。リグレットも怒ってた。それに」



フィリアムも凄く心配してた、と続けられれば流石のグレイも言葉に詰まり押し黙ってしまった。



「ちょっとちょっとー、アンタなに人の弟困らしてんだよ。いくら義兄だからって何でもして言い訳じゃないんだぞコノヤロ」

「うるせェ。それはテメェにも十分言える事だろうがっ」



この家出人が、と突っ込むグレイだがアリエッタからして見ればどっちもどっちだった。しかし彼女は基本的に二人の言い争いには口を挟まない為、再びフレスベルグに指示を出すと静かに城の奥へと消えていった。



「大体テメェ、こんな所で何やってンだよ。仲間にも散々迷惑かけやがって」

「迷惑かけちゃった事は謝るよ。でもさ、自分でも何でここにいるのかわかんないんだよ」

「何……?」



覚えてないのか、とグレイが訝しげに問う。しかしレジウィーダはそうじゃないと言う様に首を振ると、少しだけ困ったように肩を竦めて笑った。


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