A requiem to give to you- 狂妄を謳う詩(1/4) -
世の中ゴミだらけの屑ばかりだ。何かあれば直ぐに預言。何もなくても預言預言預言……本当にウンザリする。
下らない。何がそんなに良いのだろうか。いつかは皆滅びるのだ。それが早まろうと、どうせ僕は直ぐにいなくなるから関係はないしどうでも良い。預言を壊すなり、人類を滅ぼすなり好きにしたら良い。
その為に預言のないレプリカが必要だって? 良いじゃないか。最も崇高な預言者が預言が詠まれない模造品だなんて笑えるよ。良い気味じゃないの。
それよりも"僕"の代わりを作るなら、より本物に近いモノを作らないとね。
……こんなガラクタじゃなくて、もっともっと、誰が見ても「導師イオン」だと崇められるようなレプリカを────
血に濡れた導師は消え行く光を見つめながらそう呟いた。
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
「こんの…………おバカアアアアアアアア!!」
静かに怒りを湛えていた筈のレジウィーダは、突然それが爆発したかのように叫びながら走り出し、そのままイオンに頭突きをかました。流石にそんな事をされるとは思わなかったらしく、イオンは頭を押さえ床で悶絶していた……のは仕方がないのだが、何故か頭突きをした本人も一緒に床に転げて痛がっている。
「馬鹿はお前の方だろ」
自分で仕掛けておきながら自らもダメージを負うなんて事、普通はやらない。
「っ、本当に、貴女と言う人は……」
と、立ち上がりながらイオンが言う。未だにフラフラと覚束ないが大丈夫だろうか。一方、超絶大馬鹿の称号を手に入れたレジウィーダも痛む箇所を擦りながら起き上がり、ハッとするとビシリと音がしそうな勢いでイオンを指差し口を開いた。
「大バカイオン! シンクに謝れ!」
いや、だから馬鹿はお前の方だって……と言う言葉を呑み込みイオンを見ると、意味がわかったらしく苦痛の表情から一転して先程と同じ様な嫌な笑みを浮かべた。
「何故?」
「な、何故ってアンタ……あんな事をしておきながら何を!!」
一体彼が何をしたのかはグレイにはわからなかったが、シンクは目の前にいるイオンのレプリカだ。そのシンクも元々は他のイオンレプリカ同様に廃棄される筈だっただけに何かしらあったのだろう。
しかしイオンはそんなレジウィーダの言葉に心底わからないと言いたそうに肩を竦めた。
「だから、何故僕があんな"なりそこない"に謝らなければならないのですか?」
「!?」
「寧ろ、生かしておいただけ感謝して欲しい限りですよ。本当なら役にも立たない"僕"などこの手で消したい所なのですが、生憎それをすると煩い奴がいるのでね。仕方なく我慢したんです」
その言葉にキレたレジウィーダが腕を振り上げたのが見え、すかさず掴んで止める。
「止めろ」
「離せ、一発殴る!」
「アホか、少し落ち着けっての」
そんな事をしてみろ、即不敬罪で牢獄入りになる。下手をしたら極刑物だ。そう言ってはみるが、そんな事で治まるような奴なら苦労はしない。
「これが落ち着けるか! いくら何でも言って良い事と悪い事があるだろうが!!」
「そりゃそうだけどな。お前、只でさえ問題起こして謹慎中なんだぞ。これ以上何かやらかしたら身の保証は出来ねーぞ」
「上等だ! そしたら逃亡生活でも何でもやったるわ!!」
その言葉にグレイは己の中の何かが切れる音がした。
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