A requiem to give to you
- 生きたい気持ち(1/6) -



そうなってしまった偶然。

そうならなければならない必然。


果たしてどちらなのか、それは星の記憶にも記されていない。

ただわかるのは、今起きている事が現実だと言う事だけだった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







光が一つ、火山に落ちた。その数秒後、まるで隕石でも降ってきたかのような凄まじい爆発が起こった。しかし被害はそうでもなく、最後の一人を火口に投げ入れようとした研究者二人がぶっ飛んだのと、手押し車が粉々に破壊されたぐらいだろう。

落ちてきた光はゆっくりとその輝きを収めていき、やがて一人の少女の姿になった。





……宙だった。宙は先程の衝撃のせいか暫くフラフラとしていたが、バランスが取れるようになってくると辺りを見渡した。



「ここって………火山!?」



自分の今立っている場所を理解した宙は素早く火口から離れた。



「あっぶなー……。にしても何だって火山なんだよ………」



滴り落ちる汗を拭いながら息を吐いた時、彼女の目の前に一人の少年が現れた。年は恐らく12歳前後と言った所か。日本にはない若葉のような緑の髪に同じ色瞳。その目はどこか虚ろにも見えたが、瞳の奥では宙に何かを訴えかけているように思えた。



「君、どうしてこんな所に…………っ!?」



宙は少年に触れようと伸ばした手を止め、息を呑んだ。


少年の身体からは光の粒が出ている。それと同時に少しずつ透け始めていた。それに驚かないと言う方が無理だろう。



「………した」



少年はポツリとそう言うと火口を指差した。



「ぼく……まだいる……」



たすけて……――


そう言い残して少年の姿は消え、光の粒と共に空へと昇っていった。



「消えた………?」



宙は何が起こったのかわからず、呆然と少年の消えた場所を見つめていた。しかし直ぐに彼の言葉を思い出した。



「そうだ、"した"って……」



熱気に顔を顰めながらも火口を覗き込む。



「あれは!?」



溶岩ばかりの火口に辛うじて溶けずにいた岩場に、先程の少年と同じ姿をした子供がいた。しかし岩場は既に崩れかけている。あと数分も持たないだろう。



「君! 大丈夫!?」



宙が大きな声で叫ぶと、少年は顔を上げた。その瞬間、少年の手があった岩が音を立てて崩れた。



「あ……」

「─────ダメだっ!!」



宙は夢中で地面を蹴っていた。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







あれからどうやって少年を助けたのかはよく覚えていない。無我夢中に火口に飛び込み、少年の腕を掴んだ所までははっきりとわかってはいた。しかし、次に気が付いた時には既に少年を抱え、元いた足場に戻ってきていた。

不意に誰かの気配を感じ、振り返ればそこには法衣を纏った男が訝しげに宙を見ていた。



「お前は………何者だ?」

「これはどう言った状況なわけ?」



宙は男の問いに答えず、自らの質問をぶつけて返した。その時、研究者の一人が苦しげに顔を上げて言った。



「グランツ、謡将……。その、娘がいきなり落……ちてき……て、我々の邪魔、を………」

「邪魔……?」



宙は眉を寄せて研究者の言葉の意味を考えた。そして周りにある物、少年の状態から直ぐに状況を理解した。



「アンタが命じたのか?」



宙が男を睨み付けながら問うと、男は暫し考える素振りを見せてから頷いた。



「そうだ」



その時、宙の中で何とも言い表せない炎が灯るのを感じた。


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