A requiem to give to you- 追憶と夢想(1/5) -
パラパラパラ
バリバリバリバリ
パラパラパラ
モギュモギュモギュ
パラパラ……パラ……
ガリガリガリガリ
モグモグモグモグ
ペロペロペロペロ
パリパリパリパリ
…………………。
「煩いんだけちょっとマジで滅ぼされたいの?」
ガコッ、と気味の悪い音と共に囁かれた言葉に青年は一先ず口の中の物を飲み込んだ。
「何カリカリしてやがる。つか、こんな所で武器を出すな。皹入っただろう」
金色の髪を持つ青年はそう言って顔のすぐ横にあるチャクラムの刺さった壁を指差した。
「それは君がバリバリモグモグ煩いからでしょ。大体、図書館では飲食禁止なの知らないのかい?」
「細かい事をグチグチ言うんじゃねーよ。小姑か」
細かくねーよ、とチャクラムの持ち主の少年は溜め息と共に吐き出した。
今、この図書館を占領しているのは二人の青年と少年。青年は背中まである金の長髪を持ち、左目を白い布で隠している。白い法衣を着ている所から、一応聖職者なのだろうが………如何せんそのガラの悪さからそうは思えない。また一方の少年は白い外套を纏い顔の半分をフードが覆っている。耳を隠すように伸ばされた髪は青み掛かった緑色をしていた。
少年はチャクラムを引き抜いて仕舞うと椅子に座って読み掛けの本を読み出した。因みに本のタイトルは………『上手な人の縛り方 〜上級編〜』
「それよりどうするの?」
少年は詰まらなさそうに青年へと問い掛ける。が、しかし青年は手元にあるお菓子を食べながら首を傾げた。
「何が?」
「何が、じゃないよ。そろそろなんでしょ。君の言うところの"開花"って」
「あー」
そう言えば、と何とも呑気な様子に少年は頭を抱える。
「ちょっと、君がそんなんで良いわけ? 預言の年まであと一年程なんだよ。あの子ともそろそろ接触図らないとまずいんじゃない?」
「んー、それなら心配ないさ」
ゴクン、とお菓子を飲み込んだ青年はフッと笑った。
「向こうから来るさ」
近い内にな、と言って再びお菓子を食べ出した青年に少年は「面倒臭がり」と持っていた本で頭を叩いた。
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
「必ずー僕らーは出ー会うだろうー」
山の様な書類地獄の処理も一先ず落ち着き、休憩に入ったレジウィーダは機嫌良く歌を唄いながら教会の廊下を歩いていた。
「同じ鼓動のー音を、目印にして………ん?」
カツン、と何かが靴の先に当たり足を止める。何かと思い拾い上げれば、それはロケットペンダントだった。
「誰のだろう……?」
うーん、と色々見てみるが名前らしきものは何もない。仕方なくペンダントを開いてみる事にした。
「うわ………可愛いー」
ペンダントの中には金色の髪をした小さな女の子の写真が入っていた。その隣には女の子の生まれた年月日と名前が刻まれている。
「メリル・オークランド……? オークランドなんて人いたっけ??」
一年程この教団で過ごしているが、オークランドの名を持つ者には会った事がなかった。もしかしたら参拝者が落とした物かも知れない。
「取り敢えず管理局に預け……」
「レジウィーダ!」
ペンダントをポケットに仕舞おうとした時、誰かに呼び止められた。
「あ、ラルゴンだ」
「……人を怪獣のような言い方をするな」
相当走ってきたらしく、息を荒くしているラルゴはそう言って呼吸を調えた。
「てか、どうしたんだ? そんなに走って」
そう言うとラルゴはレジウィーダが手に持っているロケットペンダントを指差した。
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