A requiem to give to you
- 追憶と夢想(2/5) -



「それ……」

「あぁ、これ? 何かここに落ちてたみたいでさ。オークランドって人のみたいだけど、ラルゴ誰だか知ってる?」

「! 中身を見たのか?」



問いに問いで返されたが、何となく感じた威圧感に思わず何度も頷いてしまった。



「あ、うん。まぁ、悪いとは思ったんだけど……誰のかわからなかったからちょっとだけ……」

「そうか……」

「ラルゴ?」



今日のラルゴは本当に様子がおかしかった。怒っている訳ではないようだが、何だが困惑しているような……安堵しているような、そんな感じだった。……かとも思えばラルゴは「いや、」と首を振った。



「突然、すまなかった。そのペンダントを探していただけなんだ」

「いや、こっちこそ……って言うか、ラルゴこのペンダントの持ち主を知ってるの?」

「ああ…………もう遠い昔の、ある一児の父親だった奴の物さ」



そう言ったラルゴの表情は哀しみと愛しさの混ざり合った複雑な物だった。その事についてはあまり深く聞かない方が良いのだろう。



「その写真の子、凄く可愛いね!」

「ん? あぁ、そうだな」

「きっと大きくなったらとてつもない美人になるんだろうなー」



そう言うとラルゴは苦笑しながら頷いた。



「そうだと良いな」

「きっとそうだよ!」



あたしの見る目は間違いなんだからっ、とレジウィーダは力強く拳を握り締めて己の美学について盛大に語った。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







暫くしてラルゴと別れたレジウィーダは教会から出て近くの公園に来ていた。……とは言っても、居るのは子供達ではなくお年寄りばかり。あと居るとすれば良い年こいて昼寝を(しかも遊具で)している大人達だった。



「じっさんばーさんはともかくとして、一体公園を何だと思ってるんだか」



大体、公園に子供がいない事はキャバクラに女がいないのと同じなんだぞ!、と一人愚痴る。かと言って誰かが何かを返すわけでもなく、レジウィーダは仕方なく近くのベンチに座ろうとした………のだが、



「ん?」



ベンチには先客がいた。その者は丁度木の影がかかる方を頭にして横になり熟睡していた。



「……フィリアム」



君は仕事疲れのサラリーマンですか、と突っ込みそうになり思わず口を塞ぐ。取り敢えず新聞紙をかけていないだけマシだろう。

しかし何故彼はこんな所で寝ているのだろうか。



(今日はオフだったけ?)



でも団服着ているから休みではない筈だ。もしかしたら休憩中なのかも知れない。……にしても、



「こんな場所で無防備に寝ちゃってまー。襲われても仕方ないよ」



てか寧ろあたしが襲いた………いやいや、何を言ってるんだ。



「仮にもあたしのレプリカかも知んない人間にそれはないか」



あははー、と苦笑するもレジウィーダはフィリアムも寝顔を覗き込んだ。

レプリカ、と言えば結局の所わからない。ディストに聞こうとしても何だかんだでそれ所ではなくなる事が多く、やはり何も聞けずにいた。



「でも、もし本当にフィリアムがあたしのレプリカだったら……嬉しいなぁ」



アッシュが聞けば思い切り嫌な顔をされそうだが、少なくともレジウィーダにとってはそうだった。もしもフィリアムが己のレプリカだったなら、弟が出来たようなものだからだ。



「兄弟がいるって良いよね、やっぱ。一人っ子には憧れるよ」



そう言って一人頷いていたレジウィーダが、ふと自分の言葉に違和感を感じ首を傾げた。



「……あれ? あたしって…………………

















一人っ子だったけ?」



いや、その筈だ。もうずっと母親と二人で暮らしてきた………………筈なのに、何故か違うような……足りないような気がしてならなかった。


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